カリキュラム

修士課程

専門科目群

 

建築物と空間の安全

津村泰範

前期

講義

2単位

 

授業の概要及びテーマ

都市や建築における防災や適正な土地利用などの「安全」について学ぶ。

達成目標

都市や建築に関する設計実務において必要な安全についての理論を修得すること。

授業計画

人間が構造物(建築)を作り、都市に集住するようになると、それまでは意識されなかった空間という概念が発生した。建築の内部空間と都市空間である。
構造物は倒壊のおそれと戦い、ついで外部からの様々な力に対する安全性を確保し、最後に空間の快適性の追求という時間的経緯を経て来た。一方都市は極めて政治的な空間として発達する。古代ギリシアの都市の規模、帝国の首都としてのローマ、中世の軍事拠点化した西欧の都市、近世以降の国家の首都としての諸都市、アジアやイスラム圏の諸都市など様々である。17世紀に起きたロンドン大火は都市の姿に大きく影響したが、その後の産業革命を経て諸問題が噴出した。都市は交易地としての基本的性格に加えて防衛拠点としての性格、時の権力者の権威の表現手段としての性格を経て、産業革命の波は都市を膨張させ、若者の育成と都市の衛生問題が関連づけられて問題視されたのである。大量破壊兵器等の開発や、地震を始めとした自然災害も巨大化した都市にとっては無視できない問題となった。我が国では都市や建築の安全性に関しては都市計画法や建築基準法、または消防法の形として規定することとなったのである。
日本における建築物の安全性に関しての方向を決定した近代的建築法制は1919年制定の市街地建築物法である。これは明治維新後の明治政府が50年をかけて準備し、まとめた都市と建築に対する安全の考え方の集大成とも言えるのである。

01 銀座大火から学ぶ

現代の都市計画法の防火地区等の概念への流れを概観する。

02 東京の都市問題の顕在化―東京市区改正条例の動き(1)

新潟県令、ついで東京府知事に就任した楠本正隆(明治10年―1877)、芳川顕正、から渋沢栄一など都市改造案に関わった人物とその思想について概観する。

03 東京の都市問題の顕在化―東京市区改正条例の動き(2)

新しい交通システムと江戸の都市構造からの脱却

04 近代的構造方法の導入から濃尾地震、関東大震災までの考え方

構造強度上の安全に関する概念の始まりと日本への導入について。

05 地震に対する構造安全性に対する概念の興隆

木構造の耐震性能の向上を目指した、佐野利器の「家屋耐震構造論」への理論展開。

06 佐野利器の考え方

サンフランシスコ地震(1906)の教訓から学ぶ。佐野の思想を法律にしたのが東京市建築条例であり、その系譜は現在の東京都安全条例に繋がってくる経緯を述べる。

07 大都市を対象とした都市計画法、市街地建築物法への展開過程

人口が集中しだした大都市における、東京で行われていた市区改正を参考とした都市計画法を制定しようとする機運の高まり。

08 市街地建築物法(1919)における安全の概念、主旨

用途地域制度、建築線、建築物の高さ制限、空地割合、一般建築物と特殊建築物の規定、防火地区の規定、美観地区の規定、有害な建築物の除去、法の適用区域などの内容の解説と現行の建築基準法への移行する主旨を火災、震災、風災の観点から解説する。

09 日本における耐震構造の進展と関東大震災の経験

内藤多仲による耐震の考え方を概説し、関東大震災前後の日本の構造設計における安全に対する考え方を概説する。

10 水平震度0.1、高さ制限100尺の解説

佐野利器によって提唱された水平震度は、関東大震災の下町では0.3とされたが、構造強度規定では0.1 とされた。その理由を概説する。一方高さ制限は居住地域では65尺、それ以外では100尺、さらに周囲が公園のような広い場所では100尺を超えられる規定となった理由について論ずる。

11 柔剛論争とは

市街地建築物法の震度法に基づく耐震計算の原則は建築物の剛性・強度を強くして、外力に対して変形しにくい堅い構造にさせようとした。これは剛構造志向する佐野利器の姿勢でもあった。一方昭和初期の段階で真島健三郎の唱える振動理論を裏付けとした柔構造を推奨した。つまり建築物は剛性を下げ、柔らかく作ったほうが地震との共振がさけられるという主張である。この柔剛論争について解説する。

12 建築基準法の安全に対する理念

昭和25年に新生建築基準法が制定された。その成立の過程と理念を概説する。

13 構造規定のその後を解説する

基準法の改正による考え方を解説し、構造規定の変遷を明らかにする。その改正を裏付ける安全性に対する考え方を明らかにする。

14 消防法にみる安全に関する理念について

新たな建築を作ろうとする場合、建築基準法の確認申請と平行して消防法に規定された内容もクリアする必要がある。その消防法の理念を解説する。

15 防災と人間―まとめにかえて

以上14講では概ね都市空間や建築空間としての物理的空間に対する考え方と構造技術的、構造学問的な進化を法律という形で社会に浸透させようとした行為であった。しかしながら、建築や都市は単に物理的な空間だけを扱うものではなく、そこに住まう人の問題が重要である。近年起きている震災や水害、大火などからの復興には「自助、共助、公助」が必要であることが顕在化した。つまり人間による空間づくりが必要となるのである。

成績評価基準

受講態度20%、課題提出80%

テキスト

適宜、資料を配付する。

参考書・参考資料等

『日本建築構造基準変遷史』大橋雄二、財団法人日本建築センター、1993年

用具

特に必要ありません。

履修希望者への要望・事前準備

設計において安全性は極めて重要であり、設計実務においてこの点を常に重視する実務者になってもらいたい。

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