清流継ぐ 磧礫の記憶

田島 誉士幸

「美濃和紙で人々を包み込みたい。」
岐阜県美濃市で生産される美濃和紙は、近年、職人の高齢化や、後継者不足などが問題となっている。美濃の伝統的な記憶を、場としてしるし、つながれていくような建築。そんな提案ができないだろうか。直線的な鉄骨フレームによる建築。その内部に、側面を美濃和紙で仕上げた、有機的な木造建築を「入れ子」にし、それを「紙の洞」と名付けた。二つは、対立する建築様式でありながらも、奇妙な共存を果たしている。紙の洞は、膨らんだり、窄まったり、捻れたりした歪な円環構造。その歪さによる、独特な陰や光が、和紙を介して内部にもたらされる。まるで、時の流れと共にゆっくりと呼吸しているように。「紙の洞」は、鉄骨建築とさまざまな形で入り組み合う。そこで行われる多様な活動の傍に現れ、人々を包みこむ。包み込まれた人は、美濃和紙の空間体験に何を感じ、また別の人へ、どう伝えるのだろうか。