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学生作品紹介(学部) 福島県伊達市の柿ばせについて

2022年卒業・修了研究展優秀賞

故郷である福島県伊達市は、過去に養蚕業で栄え、「蚕都」と呼ばれるほどであった。そのため、伊達の産業には養蚕業の上に成り立っているものも多い。そして現在は、「あんぽ柿」と呼ばれる干し柿の生産が盛んである。本研究では、柿の加工時に使用される「柿ばせ」に着目し、発祥の地である伊達市梁川町五十沢地域の柿ばせを対象に調査を進めた。その結果「二階建て、一階が作業場や倉庫、二階が干し場という形態が柿ばせの基本で、それ以外は一見すると統一性がない。しかし、いくつか類型がある。」と分析するに至った。類型は、「構造材」「二階の建具の有無」といった意匠の部分と、「新築」「既存の建物の一部を解体しての活用」「既存の建物の外部に手を加えた活用」の3種類の建築方法を掛け合わせた計24通りで捉え、軒数や分布を中心に再度統計をとった。結果として、①木造で建具を備えるものが多い反面、屋根等それ以外の部分の差異は少ないこと。②建築の方法では、既存の建物を活用するものが多く、五十沢の柿ばせの約 2/3 は、既存の建物が転用されていること。以上2点が判明し、五十沢の柿ばせの全体的な傾向が浮き彫りになった。転用された建物には、蚕室をはじめ別の産業の建物も多い。福島県外の「柿ばせ」や、干し柿生産の実態と比較すると、こうした既存建物を活用した柿ばせは、五十沢独自であることが判明した。あんぽ柿は、養蚕業に代わり地域住民の精神・収入を支えただけでなく、柿ばせというかたちで、現代で言う「空き家問題」の解決にも貢献したと言えるだろう。

学生氏名 佐藤 菜々緒
制作年 2023
指導教員 平山 育男
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