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とじる
2026.05.14 学生

ラオスの美しい品々をデザインで魅せる。

長岡造形大学デザイン学科4年小谷凜子です。
皆さんはラオスと聞いてどんなイメージを思い浮かべるでしょうか。
9月、私が滞在したラオス北部のシェンクワンには、緩やかに流れる時間の中で、互いに助け合い、たくましく生活を営む人々の姿がありました。飛行機の窓から見えたシェンクワンの町に、不自然に大きな穴がいくつもありました。ベトナム戦争で落とされた爆弾の痕跡です。そして今なお不発弾として至る所に爆弾が眠っています。暮らしのそばに潜む不発弾は、シェンクワンの繁栄を大きく妨げています。この授業では、シェンクワンに渡航し、現地で行われている商品開発のプロジェクトにお邪魔しました。

世界遺産での展示リニューアル

授業ではラオスの伝統的なスカートである「シン」を村の方がアップサイクルしたトートバックとコースターの観光商品があります。

シェンクワンには、謎の巨大な石壺が点在するジャール平原という世界遺産があり、ジャール平原のビジターセンター内には、その観光商品の販売ブースがあります。今回私たちはより多くの方が商品を手に取り認知してもらうために、この販売ブースをリニューアルしました。

爆弾が落ちた痕跡
世界遺産ジャール平原

―吊るす展示―

観光客の方の目にすぐ留まるよう商品を吊るして展示することで、目線の流れを作りました。前年度の先輩が考案したパッケージを参考にしつつ、四隅をポケット状にすることで、1枚ずつ柄の違う商品の魅力が伝わる展示に仕上げました。現地ではスタッフの方意見を取り入れながら、商品が際立つよう吊るす数にもこだわりました。(齋藤)

―卓上展示―

商品の説明パネルを新たに制作しました。商品に親しみを持ってもらうために、商品に使われている伝統衣装シンについての詳しい解説や、商品の特徴、制作背景を伝えています。 (小田)

商品の値札は、シンを用いた素材感のある商品に合わせて、木材に文字を刻印したものを作成しました。ロゴを入れることで、展示全体でのブランドの統一感を演出しました。また、リニューアル記念としてステッカーの無料配布を企画しました。(北澤)

―壁面展示―

訪れた人がすぐに販売スペースであることを認識できるよう、壁面に大きな説明を書いた黒板の設置を提案しました。木材と布の調和を意識し、黒板にはシンの布を取り入れました。従来の説明にデザイン思考(Design Thinking)の要素を加え、現地の人々が自らデザインを行っていることを示しました。(狩野)

―看板―

展示を象徴する看板には、ロゴマークと村の風景を描きました。ブランド名の「PHUHAK」は、村の人々の象徴的な山です。表面から2枚目まで繋がる村の風景を描くことで、PHUHAKに見守られながら生活する村の人々と、その暮らしの中で作られる商品を表現しました。2枚目の裏に村のご神木的なお茶の木を描くことで、村の人々の精神的な支えを表現しました。村には私が描いた景色と同じ景色が広がっていて感動しました。現地の方にもとても喜んでいただけたので良かったです。(小谷)

リニューアル前
リニューアル後
吊るす展示
卓上展示
黒板
看板

ビジターセンターで展示のセッティングが終わった後日、滞在中にもう一度ジャール平原に訪問できることになりました。そこで、吊るす展示のポケットの内側に英文を刺繍し、商品を手に取ってくれた方がシェンクワンをより好きになってもらえるようなメッセージを届けることにしました。
どんなメッセージが良いかみんなで話し合い、刺繍糸や布などの材料は現地の市場で調達しました。拙いラオス語や身振り手振りでのコミュニケーションでしたが、理想に近い素材を手に入れることができました。限られた時間の中、皆で一生懸命刺繍をし、とても良い仕上がりになりました。(齋藤)

刺繍中
6つの刺繍によるメッセージ

日本での準備の甲斐あって、無事展示を作り上げることが出来ました。現地の限られた資源を使ってバージョンアップさせたのも良かったです。
リニューアル前のアクリルボックスで展示していた5か月間、商品が売れたことは無かったのですが、リニューアル後2か月間で6個の商品が売れたと報告がありました。今回の取り組みで、商品がより多くの人の手に渡るきっかけを作ることが出来ました。
全ての設置を終えた後、JACAのラオス職員の方からフィードバックを頂きました。
・吊るす展示など空間を使った工夫が良い
・手に取りやすくなった
・メッセージの刺繍は想いが伝わる
といった意見の他に、
・外から展示に気づきにくい
・購入窓口までの動線が分かりづらい
・展示の状態をどうキープしていくのか
といったご指摘も頂きました。自分たちの考えた展示を完成させることが目的になってしまい、現地での展示が担う役割や存在についての想像が不十分だったと思います。展示をきれいに保つことに関して個人的に取り組んでいることを、記事の最後に記しています。

SNSでの情報発信

私はプロジェクトとゆるやかな繋がりをもったラオスの情報発信コンテンツとして、インスタグラムのアカウント制作、運営を行いました。日本の大学生のリアルな視点でラオスの魅力や今回の活動を発信し、ラオスを身近に感じてもらうことで「行ってみたいな」と思ってもらえるようなアカウントを目指しました。
現在までに投稿4本、リール動画13本を発信し、リール動画の総再生回数は4000回になりました。(北澤)

村で行った4つの取り組み

現地で実施されているプロジェクトにお邪魔して、自主企画のワークショップを4つ開催しました。

1:描くこと・作ることの楽しさを伝えるワークショップ

私は描くことや作ることの楽しさを伝えるワークショップを行いました。創作の楽しさを経験してもらうことで、現場において土台となる作るという行為のモチベーションを支え、現地の方々の物作りを持続させる手助けになればと企画しました。傍らで私も手を動かし滞在制作をしていました。
「burt de sign」という誰もが簡単に絵を描ける方法が用いられていることを参考にしながら、造形大生と村の方で一緒に絵を描く時間を共有しました。柔らかい雰囲気で自然と笑みが溢れ、それぞれが交流する時間が流れました。
このワークショップで生まれた物は私の滞在制作と合わせて、首都ヴィエンチャンにあるファブリックブランド「SAYA」の店舗内に展示し、商品のプロモーションに繋げました。(牧田)

子供たちも参加してくれました
笑顔で楽しんでくれました
ファブリックブランドでの展示

2:ロゴマークのお絵描き

観光商品を作っているハンミーサイ村とムアン村には、村の特徴や魅力を表すロゴマークがあります。私たちは、このロゴマークをテーマとしたお絵描きを行いました。参加者がロゴマークから受けた印象を、思い思いの色や形で表現してもらいました。 村の風景やお気に入りの場所、ラオスの国旗など、それぞれの自由な解釈で描いている様子が印象的でした。(小田)

自由に色を塗る様子

3:ミサンガ作り

ラオスには「バーシースークアン」という紐を腕に結ぶ文化があることから着想を得てミサンガ作りを村人たちと実施しました。当初は簡単な編み方を提案しましたが、予想以上に村の人々が積極的に新しい編み方を考案し、創造的に取り組む姿勢が見られました。(狩野)

村の方と一緒にミサンガを編む狩野さん
それぞれの色、編み方でミサンガができました

4:伝統布を使ったプロダクト提案(スマホショルダー)

ラオスの伝統布を使った新しい商品として、スマホショルダーを提案しました。ラオスの女性たちが日常的に身につけていたシンを新たな形で普段から持ち運べるようなプロダクトにしたいと思い考案しました。
渡航前に試作品を制作し、形やポケットの有無などを試行錯誤していきました。現地では、裁縫屋さんの方にお時間を作っていただき、試作品の現物を見てもらいながら作り方や必要な布のサイズなどを確認していただきました。(齋藤)

制作中
完成したスマホショルダー

新たに2つの村へ

新しく商品開発を始めるナクハンペン村とシェンキョー村にもお邪魔しました。
ナクハンペン村の入り口には、戦争で落とされた爆弾がずらっと並んでいます。過去を乗り越えたくましく生きる村の方々の強さを感じました。ナクハンペン村のモンの人々はモン語を話すため、ラオス語でのコミュニケーションが取れません。日本とは違って同じ国でも異なる言語を扱う人々が存在することを実感しました。

ナクハンペン村の写真 村の入り口に並ぶ爆弾
美しい刺繍

次に訪れたシェンキョー村は女性たちがとても活発的な村で、村を探索すると各家庭に立派な織り機があり、女性たちが複雑な模様を編んでいく光景は魔法のようでした。造形大生も実際に織りの体験をさせていただきました。織る作業は見た目以上に技術がいるため、体験した牧田さんは苦戦しながらも現地の方に教えてもらいながらだんだんとコツを掴んでいました。

シェンキョー村の写真 村の女性が複雑な柄を編む様子
先生と村の女性に見守られながら手織に挑戦する牧田さん

小学校で行った2つのワークショップ

現地の小学3年生40名を対象に、ものづくりの楽しさを体験してもらう2つのワークショップを開催しました。

1:ネームプレート作りワークショップ

私は小学校でのワークショップでネームプレート作りを企画しました。自分の名前を立体や色を用いて表現することで、自分の個性を見出すとともに、ものづくりを通してものの成り立ちや意味を考えるきっかけ作りとして企画しました。
キャンバスへの着色では、子供たちが自由に絵の具を使って想像を超えた素敵な色使いを見せてくれました。グルーガンを使って名前を立体的に書く体験では、初めての素材との出会いに驚きながらも真剣に取り組んでくれました。
ラオ語で「アニメニャン(これは何)?」と描いているものやラオス語を教えてもらいました。現地の言葉での交流を通してより近い距離で関われたと思います。

あなたの名前はなぁに?と聞いているところ
素敵なグラデーションで表現してくれました
楽しそうに作業する子供たち
素敵なネームプレートが出来上がりました

ラオスには一番人口の多いラオの人々のほかにいくつもの民族が存在しています。少数民族とラオの人々の言語は全く異なるもので、少数民族の子供たちはラオ語で行われる授業についていけず、進級できないことが問題となっています。訪れた小学校にも少数民族の生徒が数名通っているとのことでした。子供たちがこのワークショップで私に沢山のラオ語を教えてくれた経験が、いつか他の民族の子がラオ語学習で困っていたときに教えられるきっかけになっていたら嬉しいです。(小谷)

2:コラージュ作りワークショップ

現地の小学生を対象にコラージュ作りのワークショップを行いました。このワークショップは、普段なかなか触れることのない素材に触れる機会を作り、ものづくりの楽しさを感じてもらうことを目的として開催しました。
子どもたち一人ひとりに正方形の板を配り、毛糸やビーズ、絵の具、リボン、布などさまざまな素材を使って、自由に好きなものを表現してもらいました。
ワークショップが始まると、子どもたちは目を輝かせながら素材を選び、思い思いにコラージュを楽しんでいました。言葉はなかなか通じませんでしたが、身振りや笑顔でのコミュニケーションを通じて距離が縮まり、短い時間でも心の通った交流ができたように感じました。このワークショップを通して、デザインやものづくりは、言語を超えて人と人をつなぐ力があるということを改めて感じました。(齋藤)

コラージュ中
完成!
友達と見せ合いっこ

元気いっぱいの子供たち

可愛らしいコラージュができました

最後に

一度も行ったことのないラオスでの展示やワークショップを考えるのは想像以上に大変でした。思い通り進まないときにはチームで意見を出し合い、ラオスついて理解を深めていったことで無事やり遂げることが出来ました。滞在中積極的にラオ語を学んだことで、現地の言葉での交流を通して、より深くラオスの文化に触れることが出来ました。
私たちがシェンクワンに滞在している間、「ドカーーン」という大きな爆発音が二回、聞こえました。それは不発弾処理の音でした。その現実離れした大きな音に、そこが不発弾汚染地域であることを実感しました。私たちにとっては歴史上の戦争が、今なおそこに残っています。 シェンクワンの素晴らしい織物、パクチーの効いた美味しい料理、人々の温かさを守るためにも、プロジェクトの活動を通してラオスの魅力をより多くの人に知ってもらい、不発弾に影響されない経済力を獲得し、ラオスの穏やかな暮らしが続くことを願っています。

私個人(小谷)としては、今回の渡航を通して得た気づきから、現在二つのことに取り組んでいます。1つ目が、リニューアルした展示をきれいに保つためのガイドブック制作です。現地で展示を完成させたものの、その後の維持方法まで考えが及んでいなかったため、現地スタッフに向けて展示管理のガイドブックを制作しています。
二つ目は新たな商品開発です。今回訪れたナクハンペン村は刺繍が得意な村で、観光商品に活かせそうな刺繍のパーツを入手することが出来ました。その素材を使ったアクセサリーの観光商品化に向けて試作に取り組んでいます。これらの取り組みがプロジェクトの次に繋がるきっかけになればと思います。