令和7年度学位記授与式を挙行しました

令和7年度学位記授与式を挙行しました。
学部生、大学院生が、ここから新たな道を歩みだします。
晴れやかな衣装に身を包み、輝かしい卒業式となりました。
卒業・修了生、並びにご家族・ご関係のみなさま、ご卒業・修了誠におめでとうございました。
これからのみなさまのご活躍を心より祈念しています。
学長式辞(全文)
本日、長岡造形大学造形学部、大学院造形研究科を修了する255名の皆さん、おめでとうございます。 保護者の皆様、そしてご家族の皆様にも、長岡造形大学の教職員を代表してお祝いを申しあげます。
また、磯田達伸長岡市長をはじめとする来賓の皆様には、本日の卒業式にご臨席を賜り、誠にありがとうございます。心よりお礼申しあげます。
さて、今ほど、卒業生の皆さんには卒業証書をお渡ししました。これからは、長岡造形大学で受ける最後の授業となります。心して聞いてください。
なお、この授業の出席コードは、ありません。
4年前、皆さんは本学の造形学部に入学し、この場所で入学式を行いました。
そして皆さんが1週間後、初めて受けた授業を覚えていますか。そう、「基礎造形」です。 入学した1年生全員が、第3アトリエ棟の教室に分かれて座り、大きな画面を覗きこみました。そこで最初の課題の説明をしたのが、「ひらやま先生」でした。
ここで1週間かけて皆さんは「立方体」を造りました。
この1週間は長かったでしょうか。そして、この1週間でどんなことを考えたでしょうか。
何故、自分は最初に立方体を造るのか。自分は立方体を造るためにこの学校に来たのだろうか。自分の立方体は立方体だろうか……。
1週間経った金曜日の朝、250個余りの立方体が教室に集められました。本来であれば250個余の立方体は、同じ形 同じ大きさ 同じ姿 となるはずです。しかし、250個余の立方体には、個性が溢れていました。
そして名前を書いた付箋には、赤鉛筆で評価が書かれ、立方体が自分の手元に戻ってきました。
金曜の講評でどんなことを言ったのか、メモを読み返してみました。そこには、
ひらやま先生は、今日の講評を楽しみに学校に来た。
今年の“S”を見せてよ!と、胸を踊らせた、そう記されていました。
そして、ひらやま先生は自称、事故調査委員長であり、「怪我はしませんでしたか」と皆さんに聞いたはずです。
加えて、皆さんに立方体は何個造りましたか?とも尋ねました。
2個、3個、4個、5個、6個。しかし、多ければいいわけではありませんでした。
また、完成度の高い「立方体」とはどんなものか、知ることはできたでしょうか、とも聞きました。
机に吸い付く立方体がA評価でありましたよね。
この課題から始まり、皆さんは4年間で100余りの課題と向きあいました。そして、その最後、100個目の課題が先日の『卒業研究』でした。
100枚のドミノはきれいに倒れてくれたでしょうか。立ち止まったドミノはありませんでしたか。
そして、立方体の講評では最後にこんなことも言ったと思います。目の前にある立方体は「今の自分」だ。絶対に壊さないように。自分の立方体に名前をつけてあげて、自宅の冷蔵庫の上に置いておいてあげてください、と。
「立方体」のりっちゃん、りつおくんは、四年間、あなたを見守ってくれたでしょうか。
さて、皆さんがこの4年間、100の課題を通して得たものは何であったでしょうか。
長岡造形大学の理念を覚えていますか。本学における建学の理念は
造形を通して真の人間的豊かさを探求し、これを社会に還元することのできる創造力を備えた人材を養成する
というものです。
大学で100の課題を通して「人間的豊かさを探求」した皆さんには、社会へ出て、これを還元して頂きたい、と考えています。
ところで「人間的豊かさ」とはどんなものでしょうか。とても難しいですよね。
しかし、日々学内で展示される皆さんの「作品」には、これを垣間見ることができました。
本日は、その1つをお話ししておきたいと思います。
一昨年のことです。既に卒業された方の作品が103教室の前に展示されていました。それは視覚デザイン学科で、徳久先生の卒研ゼミで行った「私宝展」という展示でした。
「私宝展」、つまり「私の宝」を展示するものです。この中の1つに、ダンボールの箱を展示した作品がありました。足を止めて、何だろうかと思って箱を覗くと、中には昆布つゆ、チョコレート、うどんなど、様々な食べ物が入っていました。仕送りの品です。そしてこの品々に添えて、おじいさま、おばあさまからの短い手紙が何通も添えられていました。
○○ちゃん 体にはくれぐれも気をつけてね
じいちゃんは○○のことをいつも思って応援していますよ
皆さんの先輩である彼女は、このダンボールに入った品々と手紙を、何にも代えがたい「私宝」、「自分の宝」としたのです。
添えられた説明書きには、こんなことも記してありました。
恥ずかしながら、私は決して良い孫ではありません。
この展示をきっかけに、一度祖父母に仕送り返しをしようと思ったのですが、何を送れば良いのか、祖父母が何が好きなのか、全く思い浮かびませんでした。頭を捻りに捻って、ようやく思い浮かんだのは、私が直接会いに行くということ。我ながら本当に呆れるほどの結論ですが、それが一番良いとも確信を持っています。
近いうちに、段ボールには入りきらないほどの土産話を持って、会いに行きたいと思います。
先輩は100の課題に向きあい、パソコンを叩き、徹夜をして説明版を作りながら、このような考えに至ったのですね。
なお、同じ条件でAIにも聞いてみましたが、「会いに行きましょう」との答えはありませんでした。
一方、この作品展示を見て、自分も学長として自覚すべきことがあることを知らされました。
本当に当然のことではありますが、一人一人の学生には、本学へ送り出した保護者の方がいる。更にその背後には、学生を見守る家族一人一人の熱い思いがある。つまり、それに応えていくことが自分達の使命であると。
ありがとう。
立方体から始まる皆さんの100の課題作品から、「人間的豊かさ」をはじめ、私自身も多くのことを学んできました。
さて、これから皆さんは社会へ巣立ちます。
設計事務所へ入る人にとって、最初の仕事は、市役所の設計といっても自転車置き場かもしれません。デザイン事務所へ進む人は、画面隅の住所や電話番号のレイアウトかもしれません。
そして
自分が一生懸命行った仕事であっても、きっとそれは
数々の指摘を受け
ダメ出しを喰らい
作り直しと言われるでしょう。
そんな時は 自分が最初に作った立方体を思い返してください。
辺に裂け目が開いていた
角が丸かった
膨らんだ食パンみたいであった
そして
何が足りないのか
何がまずいのか
何がダメなのか
自分の力で考えてください
皆さんが100の課題を通して得たものはきっと数多くの「失敗」や「やらかし」、そして自分の「慢心」であったかもしれません。
指摘は激励
ダメ出しは自分を見つめる機会
作り直しは、出直し、であり
自分自身の成長の糧と考えてください。
社会は、自分の実力を試す場として楽しい一方、辛い道のりでもあります。
しかし、
皆さんには、皆さんと共に「造形」を学んだ長岡の地域があり、先生、友達がいます。
長岡で学んだ時間は、何ものにも代えがたい財産と考えます。
そして社会へ出ても、皆さんを温かく見守る家族の方々がいます。
自信を持ち、前を向いて未来へ進んでください。
最後の授業はここまでとします。
授業なので、いつものように課題を出しておきます。期限はありません。
近い将来
社会に出た皆さんにとって一番の「作品」を
私たちにぶつけてください。
そして新しい世界をわたしたちに見せてください。
それが若い皆さんにとって、これからの役割だと考えます。
幸多きことを期待します。
これで「最後の授業」は終わりとします。
令和八(二〇二六)年三月一三日
長岡造形大学 学長 平山 育男
おめでとうございます。































