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とじる
2022.11.10 教員

よりよい未来をデザインする「エコロジカル・ランドスケープ」

建築・環境デザイン学科 准教授 柏原 信幸 先生
2022年に建築・環境デザイン学科の准教授に着任した柏原信幸先生。風景や景観を設計するランドスケープ・デザインの中でも、先生が専門とするのは「エコロジカル・ランドスケープ」と呼ばれる領域です。環境問題がクローズアップされる今の時代に注目を集める「エコロジカル・ランドスケープ」。その面白さやゼミの様子についてお聞きしました。

ランドスケープ・デザインは「関係性のデザイン」

そもそも、ランドスケープ・デザインとはどのようなものですか?

ランドスケープというと「風景」をイメージする人が多いと思います。家を一歩出たら、その対象空間が広がっていると言っていいでしょう。私にとってランドスケープ・デザインとは「関係性のデザイン」。住宅と庭、団地と外部空間、都市と自然。人と人という関係性ならば、語らいの場や屋外活動の場を作ることがランドスケープ・デザインだと思っています。

人は快適性を求める生き物です。求めすぎた結果、アスファルトで固められた風景になったり、異常気象が発生したりしています。ランドスケープは人間の時間軸だけでなく、もっと長い時間軸で計画することが重要です。なぜなら、風景を作り出すのは植物だから。植物がないと人も他の生き物も生きていけませんよね。土と気温と水の循環、それらの要素によって育つ植物が変わるから、ハワイではヤシの木が生え、日本では広葉樹林や雑木林といった風景が生まれます。そこに人間の営みが加わることで「ランドスケープ」ができていくのです。

地球環境にやさしい次世代型ランドスケープ

その土地ならではの風景ができる、ということですね。

そうですね。さらに私は「エコロジカル・ランドスケープ」という手法をよく使います。これは地域の潜在能力をいかに引き出すかが重要です。地域の自然特性である「エコシステム」と、等高線の操作や水の処理をする「エンジニアリング」を同時に行うことで、人が生活しやすく生き物と共生するランドスケープを作り出します。大事なのは、大地や自然の摂理に逆らわないことです。
たとえば最近は、ゲリラ豪雨がよく発生しますよね。大雨が降った時、これまでは降った雨をいかに人のいない場所へ効率よく流すか、ということでコンクリートの設備が作られてきました。しかし最近は「グリーン・インフラストラクチャー」といって、自然環境を生かしてわざと水溜りを作り、河川に負担をかけない基盤を作ろうという考え方が増えています。それも、ただコンクリートをはいだ砂利ではもったいない。植栽や生き物が暮らせる環境を整えれば、生物多様性にもつながりますよね。
異常気象など地球が拒否反応を起こしつつある中で、自然との新しい向き合い方を改めて考えなければならない時代。エコロジカル・ランドスケープの視点で社会を見る重要性がますます高まっています。

創造力豊かな長岡造形大の学生に期待!

先生のゼミではどんなことを教えているのですか?

たとえばランドスケープの設計でスケッチをしてもらうのですが、「アイレベル」で描くよう指導しています。アイレベルとは人の目線のこと。上から全体を見る鳥瞰図も大事ですが、実際にランドスケープが完成した時に、人の目線でどのように見えるか。そこに嘘があってはいけないし、それを先にスケッチで確認できることが重要です。
長岡造形大の学生は、理工系の学生とはちょっと違って「創造者」ですよね。空間把握能力があり、発想が豊か。等高線操作や排水について学んでもらうのですが、理詰めではなく「こういうものを作りたい」という着地点から入り、「それにはこれを解決しなければ」という考え方ができる。すごく頼もしいなと思います。

学生の皆さんにも話を聞いてみたいと思います。なぜランドスケープに興味を持ったのですか? また、柏原先生はどんな先生ですか?

もともと「個人的な居場所を作る」という意味でインテリアに興味があって入学しました。授業で「ランドスケープとはみんなの居場所の基盤を作ること」だと教わり、インテリアとの共通項を感じて興味を持つようになりました。(4年生・高野美佳子さん)

私はかっこいい建築物が好きで、工業高校で建築を学んでいました。建築物の周辺環境としてのランドスケープに興味が湧いてこの大学に入り、新たに知ったのがエコロジカル・ランドスケープという分野です。「人と自然の中立に立つ」「自然と人が1/2ずつ風景を作る」という考え方が自分の中でヒットしましたね。(4年生・増田達哉さん)

柏原先生は、私たちがどんなに突拍子のないことを言っても一度受け止めてくれます。「なんでこう考えたの?」「面白い案だね」と言ってくれて、その案をより深めてくれるような言葉をかけてくれます。サラサラっとスケッチを書いて説明してくれるのも分かりやすいです。(3年生のゼミ生)

学生たちの言葉、いかがですか。

いや、お恥ずかしい(笑)。学生が「こんな風にしたい」と持ってきてくれた絵に対してスケッチで返す、スケッチで会話するようなことはあります。言葉以上に伝わるものもありますしね。
私も学生時代から「人と自然の関わり」をテーマに研究してきました。放置された植林地や限界集落と呼ばれるコミュニティなど様々な課題があります。地域の課題や環境問題に興味のある高校生も多いと思います。それをすっかり解決するのは簡単ではないにしても、現状を維持したり少しでも改善する一つの手段として「エコロジカル・ランドスケープ」があることを知ってもらえたらうれしく思います。

PROFILE

建築・環境デザイン学科 准教授
柏原 信幸(かしわばら のぶゆき)