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2021.07.20 教員

金属を熔かし自由自在なカタチをつくる

造形学部 美術・工芸学科 長谷川 克義准教授

1000℃を超える熱で熔かした金属(主に銅合金)は水のように流れ、型に入れると、緻密なデザインのアクセサリーから見上げるほどの大仏像まで、大きさも分野も用途も異なる様々なカタチとなって、目の前に現れる。それが、鋳金(ちゅうきん)という金属工芸です。

長谷川克義先生のゼミでは、古代に生まれたこの伝統の技法を用い、新たな技術や知識、また、作り手一人ひとりの感性、細かな手仕事を加えて、器や装飾品、オブジェなど唯一無二の作品づくりを行っています。鋳金の魅力と可能性について、長谷川先生に教えていただきました。

はるか古代に生まれ、進化してきた

「鋳金」とはどのような技法ですか?

鋳金は、素材の金属をはじめ、土、火、水など自然のものを利用して作られるので起源も古く、日本では弥生時代の銅鐸、ヨーロッパではブロンズ像などがこの方法で作られてきました。熔かした金属を型に入れるというベースは変わりませんが、素材や技術は時代とともに多様化し、進化を遂げ、新しい製造手法や表現を可能にしてきました。

ここでは、その中のひとつ、「蝋(ろう」型石膏埋没鋳造」によってモノづくりをしています。まず、デザイン画をもとに原型をワックス(蝋)で造形。石膏を粘結材とする鋳型の中に埋めて炉で焼成すると、ワックスが溶けて空洞部分を持つ型が完成します。そこに熔かした金属を流し入れて冷やし固めると、ワックスの原型が金属造形物に置き換わって現れます。この後、表面や細かな部分の仕上げ加工を行い、目指す「カタチ」を作っていくという方法です。

工程ごとに思いを反映できる

鋳金の魅力はどういうところですか?

私にとっては、あれほど硬かった素材が熔けていくことへの驚き、そして、熔けた金属の美しさです。水のようにさらさらと流れる独特の質感、光沢のある表面への映り込みが本当にきれい。それを使って、思い描いた通りのものが作れるのだと知って、惹きつけられました。複雑な形が精緻に再現でき、パーツパーツに分けなくても一体化して作れるところも鋳金ならではの特徴です。

金属工芸の一種なのですが、最初から金属を加工する鍛金・彫金とは異なり、ワックス素材など他の素材に触れ、熔解や焼成、仕上げ加工など多くの工程を経るところも面白いと思います。それぞれの段階で手を入れることができ、その時の思いを反映させられるので、目指すものをとことん追求できる良さもあります。

鋳肌の質感と目で感じる重量感

先生はどのような作品をつくられるのですか?

大学院時代の指導教授が制作研究の他に出土物や資料を手掛かりにして銅鐸や仏像の製造方法を解明する実験考古学についても研究しており、その助手的な仕事をしていたので古代鋳造技術にも興味がありますが、今は、伝統工芸を踏まえた自分自身の作品制作が中心です。作っているものは、人が触れ、人が使う器。どういう使われ方をするのか、たとえば花器ならどういう花を活けるのか、盤なら何を載せるのかをイメージして作ります。作る側の意識と使う人の意識が合ってこそ、そのモノが生きていくと考えているからです。

学生にも伝えていますが、私自身も、鋳金でなければ出せない鋳肌の質感、目で感じる重量感という特徴を活かすことを大事にしています。

新しい発見がいっぱい~学生の声

なぜ鋳金を専攻したのですか?

ガラス工芸をしたいと思って美術・工芸学科に入学したのですが、2年生のカリキュラムで金属工芸を学び、鋳金のおもしろさを知って志望を変えました。最終形は金属なのに、原型は柔らかなワックスで作るので手だけでどんな形にもできるという可塑性、鋳型を割って造形物を取り出すときの「生まれた」という感覚は、他にはない魅力です。工程のほとんどは知らないことばかりで、新しい発見が多く、新鮮でした。

一方、熔けた金属を型の中にきちんと行き渡らせるには、金属が流れるルートを考えて作らなければならないのですが、型内部の空間を把握する力が必要ですし、微妙な加減に公式などはなく経験値も必要。工程としては、ここが一番難しいところです。失敗に向き合い、自分と向き合うことで、技術的なことだけでなく、精神的にも鍛えられたと実感しています。

太田なつみさん 4年

(太田なつみさん/4年)

プロデュース力を将来に活かしてほしい

指導されるとき、どんなことを伝えていらっしゃいますか?

「まずはやってみよう」という姿勢です。アドバイスは、学生がカタチをシビアに見始めた時、「もっとこうしたらいいのでは」と自分たちで考え始めた時に行います。また、彼らが行きすぎたり、はまり込んでしまったりしたときにストップをかけるのも教員の役目だと思っています。

いつも言っているのは「失敗することは大事だ」ということです。失敗を知らないと、なぜ成功したのかがわからない。失敗し、考えて再度やってみる、繰り返して覚える――これはモノづくりに限ったことではなく、彼らの将来に必要なことではないかと考えています。

また、鋳金では重いものを扱ったり、熔解させた金属を注ぎ込んだり、タイミングを計って協力して行うことが多いので、段取り力や人を動かす力が獲得できます。さらに「自分自身のデザインをどうカタチにして、どう見せるか」、つまりプロデュース力も身に付けて、卒業後に自分が目指す道で発揮してほしいですね。

写真は視覚デザイン学科4年生 月田 小夏さん 撮影

長谷川准教授の作品紹介

鋳銅焼肌文花器「綻蕾」  w138×d138×h279㎜ 洋白 蠟型石膏埋没鋳造


鋳銅盤「陵丘」 w290×d290×h43㎜ ブロンズ 蠟型石膏埋没鋳造

PROFILE

造形学部 美術・工芸学科准教授
長谷川 克義(はせがわ かつよし)