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とじる

Photo Credit:Red Dot Award

Photo Credit:Red Dot Award

2023.04.04 卒業生

卒業生にインタビュー!クリエイティブ・ユニット「SPREAD」に聞くデザイン論【前編】

世界で活躍するクリエイティブ・ユニット「SPREAD」。山田春奈さん、小林弘和さんはともに長岡造形大学の卒業生です。このたび世界三大デザイン賞の一つ「Red Dot Design Award」にて2021年、2022年と2年連続グランプリ受賞の快挙を達成。デザインで活躍する原点となった大学生時代や、現在の活動についてお聞きしました。

出身も興味も違う二人が同じ大学に

まずは入学のきっかけを教えてください。やはりデザインに興味があったのでしょうか?

小林 僕はなかったです(笑)。僕らは二人とも大学が開学した1994年に入学した一期生。僕は新潟出身で、その年、新潟には新しい大学が複数できて、その一つが長岡造形大学でした。響きからして「なんか面白そう」で、新しい学校だから「なんか合格できそう」と思ったんです。
音楽が好きだったのも大きいかな。当時“渋谷系”と言われたフリッパーズ・ギターやスチャダラパー、洋楽はプライマル・スクリームやザ・ストーン・ローゼズ、ビョークなんかを聴いていました。雑誌は「Cut」や「Rockin’ on JAPAN」を愛読。編集スタッフを紹介するページに「アートディレクター」の名前があって、そういう仕事もあるんだなという認識はありました。

山田 私は東京出身で、実家から離れた新宿の高校に通っていました。「環境が違うと街や人の雰囲気も変わるんだ」ということに興味が湧いて、勉強してみたいと思いました。それと、高校卒業後はとにかく東京を離れて一人暮らしをしたかった。環境デザインを勉強できる大学を探して、信濃川の雄大な流れにも惹かれて長岡造形大学に入りました。

入学式の様子

デザインはスキルからコミュニケーションへ

入学後はいかがでしたか?

小林 勉強は苦労しましたね。周りは美術予備校から来た学生も多くて、デッサンとか立体造形を「きれいに作る」という点ではかなわない。「なぜそれをやるのか」が見えづらくて、正直しんどさもありました。

山田 新しい大学というのもあって、いろんな人がいましたね。当時この言葉はあまり使われていなかったけど、まさに「多様性」。どんな人も受け入れる受け皿のような場所でした。

小林 あるテレビドラマが好きすぎで、どんな課題もそのテレビドラマのキャラクターシリーズで出す人がいたり…マニアックな人が多かったよね(笑)。
僕は3年生からグラフィックを専攻。雑誌の表紙を作るとか具体的な課題になると成績が伸び始めました。美しい形を作るのは苦手だけど、面白いことを考えることはできる。それが自分の強みでした。

山田 時代もあったかもね。コンピューターが普及し始めて、デザインの概念が変わり始めた頃。それまでデザインはスキルだった。手でいかにきれいな線を引くか。いかにきれいな文字を書くか。でも「デザイン=コミュニケーション」という考えが出始めて、どういう「コト」を作るかが重視されるようになりました。

チーム演習で社会を疑似体験

授業や先生との思い出はありますか?

山田 私は都市計画、ランドスケープデザイン、建築保存、建築と幅広く学びました。でも成績が伸び悩んで評価はB -とかC+とか。それで一度、「これ以上やれないくらい頑張ってダメなら学校を辞めるなり方向転換しよう」という意気込みで頑張ったら、Aを取れてうれしかったですね。
今につながっているのは、世界的なランドスケープアーキテクトの上山良子先生と出会えたこと。先生から教わった「ランドアート」や土地の記憶を探る世界に強く惹かれました。

小林 僕の担当教官はアートディレクターの鎌田豊成先生。ファッションブランド「ベネトン」の当時の広告は、ファッション広告でありながら人種差別などの社会問題に対する強いメッセージを発信していました。ベネトンの広告に衝撃を受け、鎌田先生にこの広告について質問し、デザインは必ず社会とつながっていることを理解できました。今の社会をリアルタイムにデザインしている先生たちの授業は緊張感があった。発する言葉はどれも魅力的で説得力がありました。

山田 印象に残っているのは、地域プロジェクト演習。領域を横断して学生がチームを組んで課題に取り組みます。先ほども言った通り、学生は十人十色。手先がものすごく器用なのに話すのは大の苦手とか。ぶつかり合ったし困ったこともたくさんあったけど、社会に出て働く環境に近い状況を経験できたと思います。

そこでお二人が一緒のチームに?

山田 いえ、違います。たまたまアパートが近所で、音楽の趣味が近かったので一緒にライブに行ったりしてました。

小林 新しい大学だからサークルもなくて。春奈は2〜3個サークルを掛け持ちしてたよね。

山田 そうそう。陶芸サークルにスキーサークル、そしてイタリア語同好会。この同好会で学んだイタリア文化や語学学習がのちにつながってくるんですよ。

陶芸サークル

スキーサークル

【後編へ続きます】