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とじる
2023.11.09 教員

社会に出る前に立ち止まってもいい。4年間の学びを広げ、深める大学院

長岡造形大学の大学院には、修士・博士課程合わせて38名の学生が在籍し(2023年10月現在)、日々研究に打ち込んでいます。といっても、研究室にこもって黙々と論文を書く…という一般的な大学院のイメージとはちょっと違うかもしれません。今回は、大学院研究科長(取材当時)の小松佳代子教授にインタビュー。授業の様子や、大学院で学ぶ意義について聞きました。

小さな大学院だからできること

長岡造形大学大学院は、どんな特徴がありますか?

一番の特徴は、規模がとても小さいことです。各学年の定員は、2年制の修士課程で1学年15名、3年制の博士(後期)課程で1学年3名です。全国的に見てもこんなに小さい大学院はめずらしいのではないでしょうか。全員が顔見知りで、領域が違ってもお互いにどんな研究をしているのか把握できるほどです。

授業の様子

修士課程には5つの領域があります。プロダクトデザイン領域、視覚デザイン領域、美術・工芸領域、建築・環境デザイン領域、そして学部にはない大学院独自の「イノベーションデザイン領域」。この領域に所属している学生が、長岡市の地域おこし協力隊の役割を兼任する「イノベーター育成プログラム(通称いのプロ)」という制度もあります。

もう一つの特徴は、実践的な研究です。大学院というと文献研究などがメインとなるイメージかもしれませんが、大半の学生が街に出て活動したり、美術作品を作るという実践を通じて理論的に考えたりしています。それぞれの領域に集中しつつ、外に出ていくスタイルが大きな特徴だと思います。

大学院研究科長の小松佳代子教授(役職は取材当時)

小松教授の著書

となると、決まった授業はあまりないのでしょうか?

授業は、修士課程1年生の前期に集中させています。その後、長岡を離れたり、留学したりとそれぞれのフィールドで活動しやすくするためです。

授業はどんなものがありますか?

地域特別プロジェクト演習(PBL)は、学生が自分の研究をする手掛かりにもなる授業です。Project Based Learning(事業ベース型)、Problem Based Learning(問題発見解決型)、Practice Based Learning(制作探求型)という3つのPBLから1つを選択して取り組みます。中でもPractice Based Learningは、制作を行う学生が多い本学大学院に合わせた、特徴的なPBLだと思います。

修士課程の必修科目でもあるPBL

私は美学の授業を持っています。主に文献を読む授業ですが、考えるきっかけや考える癖をつけることにもつながります。学生からは「今まで使ったことのない脳の部分を使いました」という声もあって、自画自賛ですが、いい授業だと思います(笑)。

美学の授業でディスカッションする様子

「自らの問い」に真剣に向き合う

どんな先生がいますか?

私小松と、イノベーションデザイン領域の板垣順平先生森本康平先生の3名です。大学院副研究科長に松本明彦先生、そして大学院の学びは領域が広いので、学部の先生方が大学院兼担として学生を指導してくださっています。

板垣准教授の研究

森本准教授の研究

松本教授の研究

学生は、どんな目的で大学院に入る人が多いですか?

動機はさまざまですね。学部で学んだ専門領域を深めたい人、学部で身につけた基礎的な技術を自分だけの表現に転換したい人、領域を変えて学びたいという人もいます。
他大学出身者や留学生もいます。特にイノベーションデザイン領域は「コトのデザイン」に重点を置くので、美術系大学以外から進学してくる人もいます。

「地域と工芸デザイン」の学外授業の様子

小松研究室のゼミ合宿の様子。合宿先では一日中論文検討や議論をすることもある

ゼミで美術館に行くこともしばしば

取材に同席している職員の坂井友美さんも大学院出身ですよね。なぜ大学院で学ぼうと?

絵画制作をつづけてきた中で、「なぜ描くのか」をあらためて考えたいと思ったからです。私は長岡造形大学を卒業後、職員として働いていました。「なぜ描くのか」を考えることは、私にとっては仕事にも関わる重要なことでしたが、働きながらじっくり向き合うことは難しく、そんな時に小松先生がポンと背中を押してくれました。

結果、大学院を経験してすごく良かったです。「なぜ描くのか」の答えは、これから先もずっと探し続けていくものだと思いますが、2年間真剣に考えた経験は、本当に大事な時間でした(坂井さん)

小松先生が監修した小山市立車屋美術の展覧会「Articulation -区切りと生成-
他大学出身のアーティストと、NIDの大学院生、修了生らが参加した。

領域を超えて会話が生まれる環境

就職や将来という点で、学部生と大学院生で違う部分はありますか?

ある学生は、大学院を卒業して新聞記者になりました。2年間じっくり修士論文を書いたり、物事を深く考えることが新聞記者の道につながったのではないかと思います。
学部との違いを挙げるなら、大学院は、ちょっと立ち止まって俯瞰して考える場所。もしかすると人生選択の仕方が少し変わることもあるのかなという気がします。

領域は5つありますが、研究科としては1つ。他領域の学生とも必然的に会話が生まれます。話すことで、学部で積み上げたものが横に広がり、縦にも深まる。大学院のロゴマークの「+」はそれを表しています。

視野を広げ、専門を深めつつ、新たな価値を創造することを表した大学院のロゴマーク

大学院の学生はみなさん同じ部屋にいるんですね。

そうなんです。議論したり、キッチンがあるので一緒にごはんを食べたり。平日も土日も関係なく、朝から晩まで誰かしらいますよ。他の人がどんな本を読んでいるか、どんな研究をしているかも見えます。私もよく院生室でお茶を飲んでいます。居心地がいいんですよね。

いつも和やかなムードの院生室

学位がほしい人も、立ち止まって考えたい人も

小松先生の研究について教えてください。

2014年頃から続けている「アートベース・リサーチ」です。いわゆる理系のように仮説を立て、研究し、立証するのとは違うのですが、“アートを研究として行う”ということを、実践も含めて検討しています。授業でもデザインやアートの制作を基盤にした研究について、考え方を紹介したり、ディスカッションする「場」を作ったりしています。

小松教授と大学院生・修了生らが執筆した『アートベース・リサーチの可能性 ―制作・研究・教育をつなぐ

10/28には書籍の発刊を記念して合評会を開催
コメンテーターと来場者をまじえ、ディスカッションを行った

どんな人に長岡造形大学大学院に来てほしいですか?

学位がほしい人、少し立ち止まって考えたい人など、どんな人でも来てほしいです。
修士課程の2年間は、長いようであっという間。その間はモラトリアム(社会人になるまでの猶予期間)でいいと思います。社会人から大学院に入り直すとしても、修了して復職する時には、きっと新しい視点で仕事に向き合えるはず。無駄なことは絶対にないです。

これからの展望について聞かせてください。

今は学生が各々の研究に取り組んでいますが、そこから一歩進んで、他領域の学生を巻き込んだり、新たなグループが立ち上がることを期待したいです。卒業後の活動につながることが起こったら面白いですね。

PROFILE

教授
小松 佳代子

長岡造形大学大学院

関連情報

小松教授をはじめ、大学院教員の研究成果をお見せする「大学院教員展」を開催いたしました。
会場の様子や、各教員のコメント動画は以下URLからご覧ください。

長岡造形大学展示館『MaRouの杜』
第6回企画展「大学院教員展」

会期:10月10日(火)~11月12日(日)9:00~16:00(月曜日、10月21日、22日休館)
会場:長岡造形大学展示館「MàRoùの杜」
入館:無料
https://www.nagaoka-id.ac.jp/about/tenjikan/23173/

書籍『アートベース・リサーチの可能性 ―制作・研究・教育をつなぐ 』

詳細はこちら(https://www.nagaoka-id.ac.jp/topics/news/22787/)