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2022.03.29

金属の原子を動かす、「鍛金」という金属造形

美術・工芸学科 助教 藪内 公美先生
金属を叩いて成形する「鍛金」。ハンマーを打ち下ろし、金属板や塊を変形させているように見えますが、働きかけているのは、実は、金属を形成する原子。原子間の結合を利用し、原子を動かすことで目指す形を作っていくという、緻密な技法です。

石川県金沢市で鍛金の技法を学び、作品制作に打ち込んできた藪内先生は、2021年4月に本学に着任。形を作るだけではなく、素材や道具もオリジナルのものを作り、学生とともに、鍛金の新しい表現や物語性を帯びた作品制作に取り組んでいます。

金属が動く。

「鍛金」はどういう技法なのですか。

鍛金は金属を叩くというシンプルな技法ですから、その発祥はとても古く、紀元前5000年頃には自然銅を石で叩いて成形していたともいわれています。

では、まず、素材についてお話ししますね。私が扱うのは銅や銀、アルミニウムなどの非鉄金属の素材が主です。銅と亜鉛を組み合わせた真鍮のような合金もありますし、また、好きな素材を配合して叩いていけばオリジナルの素材が生まれるので、種類は数えきれません。それくらい素材の可能性は無限です。

次は作り方です。板状の金属を「当て金」という土台に載せて、多種多様のハンマーで叩いて形を作っていくのですが、薄くして加工するのではなく、厚みは変えずに形にしていくんです。叩くことで、金属が反発したり圧縮されたりして、金属の原子が動いていく。この金属が動くというところに興味を持ったのが、鍛金をやっていこうと決めたきっかけです。その後、原子を動かすという私の行為の繰り返しで造形が成り立つと意識した時、ちょっと大げさかもしれませんが、世界観が変わりました。物質のある瞬間の姿が造形として現れているのだと感じ、そういう壮大な物語性を伝えられる作品を作りたいと思うようになりました。

 

手でつくる。

ハンマーの種類が多いのですね。

目指す形や質感、模様などによって打撃面のサイズや形状が違うので、ある程度の本数は必要ですし、作品を作っているうちに「もう少し細かく打てるもの」「ひと回り大きい面を」など徐々に増えていっちゃうんです。叩くという作業に力はそれほどいらないのですが、コツコツと細かな作業を繰り返すので、木製の柄の部分は自分の手に合っていた方がいいと思います。太さや長さだけでなく、角ばっているか丸みがあるか、滑らないように表面に切り込みを付けたり、布やテープを巻いたり。金鎚は手の延長ですから、こだわりたくなりますね。

とはいっても、鍛金は道具を揃えなくてはできないというものではありません。叩く、叩いて硬くなったら火で熱して軟らかくして、また叩く―。これを繰り返して形にしていく、ある意味原始的な制作方法なので、「これじゃなきゃ」という当て金や大きなバーナーといった特別な道具や設備がなくてもいいんです。大きなものを作るときにも、上に乗ったり、中に入ったり、作る人が移動しながら自分の手に当てバン(手に持つ当て金)を持って叩いていけばいいので、サイズの制限もなし。素材も道具もサイズも自由なので、サバイバル能力を発揮して、一人でいろいろなものを作れるところも鍛金の魅力だと思います。

 

可能性は無限大。

鍛金の魅力を教えてください。

鍛金は歴史のある技法ですが、「限界」がきていない、つまり、まだまだ作品の幅が広がるだろうと思っています。そもそも金属の器は、ヨーロッパでは長く日常的に使われてきましたが、日本では、漆器や陶器が一般的だったため、それほど使われてきませんでした。最近、ビール用に金属製カップが用いられたりして、金属の器が注目されるようになり、使われ方の幅も広がるだろうと思っています。新潟県は金属加工が盛んで、また、銅板を金鎚で打ち起こして器を作る工房もあるので、他のエリアよりは金属器を身近に感じている人も多いかもしれません。私のゼミにもこのような地域性がきっかけで、この大学に進んだという学生がいます。

それ、私です。もともとモノづくりが好きで、その中でも伝統工芸に興味があり、進路について調べているとき、金属加工を行う有名な産地があることを知って、この技法を学びたいと思ったんです。産地の近くの大学で学べるのなら、そこへ行こうと、入学を決めました。
鍛金では、金鎚と当て金を使い、一から物を作っていきます。最初から最後まで素材と向き合い、自分の意図した通りに形を動かしていくことはとても面白いと感じます。(3年/佐川和暉)

 

長岡造形大学の「ここが好き」~学生の声

これまで経験したことを教えてください。

藪内先生は「縛られずにやってみよう」と言ってくださり、鍛金では本来できないようなことも、「本当にできないことなのか」を試し、その後に「どうやったらできるか」を一緒に考えてくださいます。できたらすごいし、できなくても考え方や試したことは他に活かせる。ここでは、鍛金という技術だけでなく、「つくる」ということを学んでいるように思います。

来年度は、異なる種類の金属を重ねて融着し、表面を削りながら叩き延ばしていくと木目のような模様が現れる、金属の色の違いを利用した「杢目金」という技法を使った卒業制作をしたいと考えています。一般的な金属は、精錬されどれも同じく均質な状態です。ですが、杢目金は一つとして同じ模様はありません。自然が持つような唯一無二性、それを自分の意志で生み出すことができる、そんなところに惹かれて、今挑戦しています。(3年/佐川和暉)

 

長岡の「ココが好き」~先生の声

長岡の印象はいかがですか。

大きな川があって、山々が遠くに見える、広々とした風景がいいですね。自然が感じられ、同時に暮らしやすい環境だなと感じています。まだチャンスがありませんが、山登りが趣味なので、周囲の山々にぜひ行ってみたいです。鍛金は1日に2万回叩くような、全身を使う作業なので、健康づくり、身体づくりも大事。自然の中を歩けば体力が付きますし、また、作品作りで疲れた時には癒してもらえます。

ここは、一般的な美術大学と違い、1~2年にデザインの基礎を学べるカリキュラムがあるのが特徴です。基礎を学ぶと、物事の考え方が身に付き、それは学生たちのその後に活かすことができます。だから、技法を学んで終わりではなく、卒業後にも活かせるモノづくりの姿勢を学んでほしいと思っています。

 

先生の作品

Phantom Landscape 01

2021

H920×W1460×D80mm

aluminum, thread

PROFILE

美術・工芸学科 助教
藪内 公美