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とじる
2023.09.14 学生

国際協力×デザイン デザインで挑戦する!ラオス観光商品開発プロジェクト

大学院 修士課程イノベーションデザイン領域 2年 三井琳世
東南アジアの国、ラオス人民民主共和国で現地の人とデザインで関わりながら、研究を行っている大学院生がいます。 ラオスで研究を続ける三井琳世さんに、現地での様子をリポートをしてもらいました!

はじめに

私は、長岡造形大学大学院 修士課程 イノベーションデザイン領域 2年の三井 琳世です。

学部生の時は視覚デザイン学科に在籍し、吉川賢一郎先生の研究室でグラフィックデザインを学びました。
大学院ではイノベーションデザイン領域に進学し、板垣順平先生の研究室に所属しています。

現在、東南アジアに位置するラオス人民民主共和国において、JICA草の根事業のデザインプロセスやデザイン思考を活用した観光商品開発プロジェクトに関わりながら、「国際協力でのデザインの有用性」について研究を行っています。

左:村人と観光地の視察情報共有 /右:村人にパッケージデザインの配色について説明

1回目の渡航

大学1年生の時、「基礎ゼミ」という授業で大学院の板垣先生の講義を受けました。講義内で板垣先生の活動紹介があり、ラオスの不発弾汚染などが問題となっているシェンクアンで収入源獲得を目的とした蜂蜜の商品開発プロジェクトが紹介されました。この授業が、ラオスに関わるきっかけになりました。

2年生の時に履修した「地域協創演習」で、板垣先生のプロジェクトを選び、参加しました。プロジェクトでは、養蜂事業に関わりながら現地で開発された蜂蜜商品のディスプレイや販売スペースのリノベーションなどを行いました。私は2週間程ラオスに滞在し、商品開発にも携わりつつ、国際協力に挑戦する機会を得ました。

商品の販売拠点をリノベーション

滞在中は中心市街地の散策や、村で農業をしている農家さんの家を訪問して、ラオスの暮らしを見学しました。私は、彼らの暮らしに懐かしさを感じ、人々のあたたかさに惹かれました。その後、2019年の冬に再度、ラオスへ渡航することになりました。

左:ムアン村のホストファミリーと一緒に記念撮影 /右:村の家と放牧されている牛

2回目の渡航

2回目の渡航では、養蜂事業を実施していた村の村長の家にホームステイをさせていただいたり、現地の政府機関の職員や村民の人々と一緒に商品のパッケージを考える会議に参加したりしました。しかし、デザイン開発は初めてだったラオスの村人は、観光客向けの商品をどのように表現すれば良いのかを知りませんでした。

私は、大学で学んでいた顧客のニーズなどを探るデザイン思考が、ラオスの現地でも活かせるのではないかと考えました。その経験が、現在の大学院での研究やプロジェクトにつながっています。

左:商品のパッケージを更新する会議の際中 /右:新商品パッケージ

ラオスは東南アジアのインドシナ半島の内陸部にあり、豊かな自然が多く残っていることから、「アジア最後の桃源郷」とも呼ばれています。一方で、経済発展が著しい周辺3カ国(タイ、ベトナム、ミャンマー)よりも国内総生産(GDP)は低く、「東南アジア最貧国の一つ」とされています。

また、ラオスでは、ベトナム戦争時代に米軍によって270万トンから300万トンの爆弾が落とされ、私が活動しているシェンクアン県ではその時の不発弾の問題を抱えておりこの不発弾汚染は、現地の人々の暮らしに様々な悪影響を及ぼしています。そして前回の養蜂プロジェクトの活動対象地であったシェンクワン県では、2019年にジャール平原(Place of Jar )が世界遺産に登録され、少しずつですが観光客も増えています。また、この地域では、蜂蜜・茶葉・手織物・米麺といった伝統的で魅力的な資源があるものの、残念ながら、それらを観光商品として販売し、住民の生計向上に役立てることができていません。

世界遺産に登録されたジャール平原の石壺群はまるでジブリの世界のような雰囲気

左:民家や畑から見つかった不発弾の数々。 /右:事故が多いクラスター爆弾

デザインプロセスを活用した観光商品プロジェクト

こうした背景から、2022年から長岡造形大学は、ラオスの政府機関と共に、JICA草の根技術協力事業「デザインプロセスを活用した持続的な観光商品の開発及び質向上プロジェクト」を実施しています。ここで言うデザインプロセスとは、既存の観光商品の欠点を観光客の視点から見つけ出してブラッシュアップしたり、伝統的な暮らしの中から観光客にとって魅力的だと思えるものを商品化するための方法です。
私は2022年6月から2023年3月までラオスに滞在しながら、このプロジェクトの専門家として、デザインの先生兼、現地調整員をしています。現地スタッフのKhamkhoun (カムクン)や政府機関の人たち、そして村の人たちが参加するデザインの勉強会の企画実施や商品開発などを行っています。
デザインの勉強会では、デザインプロセスを基礎から学びます。村の人々は、古くから伝わる織物や、お茶、はちみつ、米麺などの自分たちの特産品を観光客にもっと届けたいという思いで、デザインプロセスを学んでくれています。

写真左:現地スタッフのKhamkhoun(カムクン)は英語が話せるお姉さん

左:村で採れた蜜蝋を使用したハンドメイドハニーソープ
右:村のワークショップで作られたハンドメイドランチョンマット

左:デザインの勉強会でのプロトタイプ(カラーマネジメントと構成について)
右:村でのデザインの勉強会の参加者

左:デザインの勉強会で企画シートを使って、観光商品のデザインを考えている様子
右:デザインの勉強会でのプロトタイプ(シンボルのデザインを考える)

活動の様子は、こちらの記事でも紹介されています。

 

そして私は、2023年6月からまた現地に戻りました。引き続き専門家として、デザインの知識を共有した村の人たちと一緒に、生活の中から新たな観光商品を開発していきます。

先日の様子。今年度の地域協創演習を履修した学部生がラオスにきて、一緒に観光商品の展示会を行いました。

〜大変だったこと〜

はじめての渡航3ヶ月目に、溶連菌感染症にかかりました。プロジェクトの調印式が無事に終わり、ラオスでの生活に馴染んできたところだったので、安堵と疲れが一気に出たのだと思います。
療養中は、いつも現地スタッフが看病してくれました。病院へ連れて行ってくれたり、家までご飯を届けに来てくれたり、本当にありがたかったです。そのお陰で完治も早く、心細い思いもせずにいられました。

左:シェンクアンで一番大きい病院
右:病院でもらった薬

〜うれしかったこと〜

デザインの勉強会では、美術やデザインを基礎から教えました。色彩や配色などの知識を伝授するよりは、やってみようということで、デザインの実践から始めました。

勉強会では、自分でアイデアを考えてもらう練習で、オリジナルの宗教的なシンボル(ウナロメ)を自作してもらったり、自分のアイデアをアウトプットする練習で、果物を見て描いてもらったりしました。

ラオスの学校では、図工や美術で絵を描く機会は少なく、デザインを学んだことがありません。ワークの途中で「むずかしい、できない」という声もありましたが、そこで諦めずに、直向きに取り組んでくれる姿がありました。最初は、集まりが悪くて少人数しか集まりませんでしたが、回数を重ねるうちに多数の村人が参加してくれるようになりました。多い時は30人近くの村人が集まってくれます。

左:村人にデザインやプロジェクトの説明をする様子
右:デザイン勉強会での様子

ラオスでのほのぼの日常

ラオスに滞在する時は、ホテルではなく、ホストファミリーから借りている一軒家に一人暮らしをしています。たまに、休日はみんなでビアガーデンへ行ってご飯を食べたり、家で一緒にご飯を作ったりします。

ラオスの主食は餅米です。そして、料理の味付けは全て唐辛子が入っていて、とても辛いです。有名な郷土料理は、パパイヤサラダ、ラープ(薬草とひき肉のサラダ)、米麺、アヒルの血サラダなどがあります。余所者の私でも、家族の一員として、とてもおおらかに受け入れてくれるホストファミリーたちです。

一番驚いた郷土料理は、燕の唐揚げでした。現地の人は丸ごと食べていましたが、さすがに頭は食べられませんでした。味はとりの唐揚げのようで美味しかったです。

左:自分が住んでいる一軒家
右:私が住んでいる町の市場の様子

ホストファミリーとの夕食

左:自作のパパイヤサラダ
真ん中:燕の唐揚げ
右:アヒルの血サラダ