【30周年特別企画】長岡造形大生×卒業生! 理事長・学長・校友会編
撮影 新保涼香(視覚デザイン学科4年)
出張撮影のカメラマンとしても活動中
地域社会の課題に目を向ける長岡造形大生
濱辺 インタビューを担当する学生会長の濱辺です。創立30周年記念ということで、長岡造形大学のこと、卒業生のことを知っていくきっかけにできればと思い、お話をお聞きしたいと思います。
私は視覚デザイン学科の3年生です。今はビューラ先生のゼミに所属し、3DCGアニメーションを学んでいます。曳田会長と矢尾板副会長は長岡造形大学を卒業されましたが、どのような大学生活でしたか?
曳田 私は2期生で、学生生活はもう30年前になりますね。環境デザイン学科(現:建築・環境デザイン学科)所属で都市計画を勉強していました。卒業後は建設コンサルタントの会社で働いた後転職し、今はロボット設計の会社の代表をしています。
矢尾板 私は3期生で、産業デザイン学科の視覚デザインコース(現:デザイン学科)に所属していました。タイポグラフィに興味があって、大学院に進学。本を読んだり学外の有名な方に会う機会に恵まれたり、とても充実していました。今でも学生時代の縁で仕事につながることがありますね。
濱辺 平山学長と佐々木理事長は、どんな学生時代を過ごされましたか?
平山 僕は東京の大学でしたが、建築が専門だったのでいろいろな建物を見にいきました。よく行ったのは奈良や京都や滋賀。お金がないから友達と1台の車に乗り合わせて、道中でもいろいろな話をして、1つの建物を見た後も「あの建物はどうなっているんだろう」と。何時間でも見ていられました。
佐々木 私は経済学部でした。授業に全然出ずにお芝居とバンド活動ばっかりしていたら留年しちゃいました。そんな大学生活でしたが、お芝居と音楽は今でも続けていますよ。4年生のゼミでは男女間の賃金格差を分析する卒業論文を書きました。
濱辺 矢尾板副会長は先生(非常勤講師)として大学にも教えに来てくださっています。ご自身が学生の頃と比べて、今の学生を見ていて感じることはありますか?
矢尾板 今の学生は社会性がすごくあると思います。自分たちの頃は社会の枠からはみ出たような個性の強い感じがありましたが、今の学生は個性がありつつも、社会の問題を捉えて解決しようとする気概を感じます。自分で課題を見出したり、デザインで課題を解決したりというのに意識が向くのは、大学が「デザイン」の捉え方を時代の流れと共に更新してきたからかもしれないですね。
矢尾板 私が在学していた頃の大学は私立でしたが、10年前に公立になってからは全国から学生が集まってきているのも特徴です。大学のある長岡だけでなく、自分たちの地元が抱える課題を意識している学生もたくさんいて、地域や社会の中で自分に何ができるかを、本当に一生懸命に考えているのが印象的です。
在校生の活動をサポートする「校友会」
濱辺 校友会とはどのような組織か教えてください。
曳田 長岡造形大学の校友会は、大学に入学と同時に学生に加入していただく組織で、在校生と卒業生で構成されます。さまざまな面での在校生への援助、講演会や研究会の開催などを通じて大学の発展に寄与することを目的としています。
矢尾板 在校生が申請できる助成金などもあるので、活用している学生もたくさんいます。「芸術活動少額助成金」は書類審査のみで1人年間1万円を補助する制度です。展覧会の開催などにぜひ積極的に活用してほしいですね。
曳田 時代に合わせて学生に寄り添った形で活動したいと思っています。コロナ禍では金銭的な補助をさせていただき、ファッションショーも毎年支援させていただいています。
多様な人が集まり、領域を横断しながらデザインを学ぶ
濱辺 平山学長は、長岡造形大学をどんな大学だと思いますか?
平山 曳田さんと矢尾板さんが学生だった頃の長岡造形大学は私立で、新潟県内と県外の出身者が半々くらい。それが公立になると、九州、沖縄、北海道と全国から学生が集まるようになりました。そうすると色の使い方からして全然違う。九州や関西出身の学生が赤や黄色を普通に使うのを見て「日本中から学生が来るってこういうことなんだな」と思いました。違う環境から来た学生同士、全然違う価値観の人が隣に座って基礎造形の授業を受けて「この人はこういうのを描くのか」と。互いに見て、発見して、自分を見つめ直すことができるのは、この大学のいいところです。
濱辺 佐々木理事長は大学運営のトップとして全体を見ておられると思いますが、長岡造形大学はどんな大学だと思いますか?
佐々木 デザインを学び、これからの社会で輝ける力を身につけられる大学だと思います。そのためにはいろいろな人と一緒に学ぶことは大事です。ちなみに職員は女性が5割くらいに増えていますが、女性の教員はまだまだ少ない印象。もちろん性別だけではありませんが、教職員も学生も、出身地や考え方が異なるいろいろな人が自分らしさを発揮できる大学にしていきたいと思います。
濱辺 佐々木理事長のような女性のリーダーも、今後増えてくるでしょうか。
佐々木 そうですね。リーダーといっても学校や会社などの大きな組織に限らなくて、ちょっとしたイベントやバイト先とか、身近にあると思いますよ。
曳田 私は大学1年のときにサッカーサークルをつくり、立上げメンバーという意味では、当初はリーダー的役割でした。サークルをつくった動機は女の子にモテたかったからなんですけど(笑)、サッカーは11人必要なのになかなか集まらない。どうしようと思ってまずマネージャー4人を先に決めたら、あっという間にメンバーが集まりました。
佐々木 何かを解決しようと思って仲間を巻き込む。先ほど矢尾板副会長がおっしゃった学生たちの能力(自分たちの見つけた課題に向き合って、デザインで解決していく力)にも通じるものがありますね。
矢尾板 私は器皿(きざら)工房という陶芸サークルに入っていました。おそらく1期生がつくったサークルだったと思います。
濱辺 器皿工房は今でも続いています。矢尾板副会長はグラフィックが専門ですが、なぜ陶芸サークルに入ったのですか?
矢尾板 単純に、楽しそうだったんだと思います(笑)。
濱辺 自分の領域以外で活動する長岡造形大生は、結構多いですよね。たとえばファッションショーはプロダクト領域の学生が企画しますが、作品である衣装の他に、ショーの会場となる舞台制作や、ポスター・映像などの広報物、さらには衣装を着用するモデルなどで、全学科の学生が関わり、領域に関係なく一緒にショーをつくりあげています。
曳田 私も専門は建築や都市計画でしたが、実習以外の心理学や人間工学、色彩学、英語などの授業は本当にやってよかったと思います。広く学んだことが自分の中に強く残っていますし、その時に買った本は今も見返すことがあります。
明日も行きたくなる大学へ
濱辺 長岡造形大学は、これからどんな方向を目指していきますか?
平山 入学したばかりの1年生に「NID造形概論」の授業をした時に、私や各学科の先生たちが話したのは、デザインにおいてデジタルとの関わりが大きくなるということ。今年新しくできた第4アトリエ棟は、デジタルやテクノロジー関連の作品を制作するための設備が充実しています。それらをどう使い、何をつくるのか。たとえば、私は研究で古い文献をたくさん読みますが、デジタルの本や資料も読みます。本といえば紙という時代は変わり、学生のみなさんにとってはデジタルの方が親しみ深いかもしれない。実際、学生の作品もどんどん変わってきていると思います。何かをつくる時に単純に素材や表現方法を決定するのではなく、目的は同じでも、アプローチの仕方や表現を柔軟に選択していくことが求められていますし、それが可能となるように第4アトリエ棟をつくりました。ぜひ固定概念にとらわれず、自分のやりたい造形を見つけてほしいですね。
濱辺 佐々木理事長は大学を経営する上でどんなことを大事にしていきたいですか?
佐々木 私は何か課題を解決しようとする時、1人ではなく周りの協力を得て、目指すところをコミュニケーションしながら解決することを大事にしています。
平山 同感です。やっぱり1人でできることは限られる。「これに困っている」「こういうふうにしたいんだ」と周りの人に話すのが第一歩。私は建築史が専門で、古い建物を修復する時に大工さんに「こう直してほしい」と伝えるわけです。大工さんに「先生やってくださいよ」と時々言われるけど(笑)、私には大工の技術はないからプロにお願いするわけです。大工さんは納得しないとやらないですから、伝え方や現場での行動は大事ですね。
濱辺 学生会という組織の中でうまくやっていくのが難しいと感じることもあります。何か心がけていることはありますか?
曳田 周りの人の言うことを頭から反対しない、否定しないことでしょうか。一回、受け止めて噛み砕く。そして相手を尊重するようにしています。
矢尾板 細かいことですが、私は略語に注意しています。長岡造形大学なら「NID(エヌアイディー)」と略されますが、なるべく開いて「長岡造形大学」と言う。小さいことなんですけど、コミュニケーションにおいて自分が当たり前と思っていても、相手にはそうではないことって結構ありますよね。
佐々木 私は、そこに集まる人がその人らしくいられる組織が大事だと思います。分かりやすくて、みんなが楽しくて、それぞれの能力を発揮できる。そのためには物事がどこかで勝手に決まったり、よく分からない理由で決まったりするような事態は避けるようにしたいと思っています。
濱辺 最後に、学生へのメッセージをお願いします。
佐々木 長岡造形大学でデザインを学ぶ皆さんは、ものすごい強みを身につけています。デザインの力で問題を発見したり、課題を解決したりもできる。その強みを最大限に生かして、社会で活躍し、輝く人になってほしいです。その可能性がある人たちばかりだと思っているので、心から応援しています。
平山 友達や教職員と一緒に大学を楽しんで、今日の授業が終わって「明日も大学に行きたいな」と思ってもらえるのが理想。その一方で、いろいろ悩んでほしいとも思います。自分が何者なのか。どこに行きたいのか。課題でも一生懸命悩んで、考えて。そうするといい作品ができますよ。
卒業生は、毎日通ったこの大学で学んだことを活かして、社会で活動して欲しい。その活動を通して、社会だけでなく、社会の一員である自分自身も豊かになってほしいと思います。
曳田 私は長岡市民として、長岡造形大学を卒業した皆さんの中で、いつか長岡に戻ってきてくれる人が1人でも増えたらうれしいです。そのために私たち長岡市民も、戻ってきたくなるような魅力的な街をつくっていきたいと思います。
矢尾板 校友会とか縦のつながりってちょっと古臭いと感じるかもしれませんが、面白い先輩もいますし、自分と違う世代との交流も時にはいいものです。レストランで同窓会を開くこともありますので、ぜひ参加してもらって交流を深めていきたいと思います。「学生の皆さんをサポートしたい」と思っている卒業生がたくさんいることを知っておいてほしいと思います。
濱辺 コロナ禍で途絶えてしまった学生会のイベントも、みんなで頑張って復活させています。私も学生会でいろんな人と交流を図り、そうすることでちゃんと成果として返ってきている実感があります。これからも卒業生、後輩、事務局の方々と一緒に30周年の年を盛り上げていきたいと思います。
平山 11月に行なう創立30周年記念イベントでは、校友会が主催や協力をしてくださった企画や、学生会のみなさんが考えた企画があります。大学の記念の事業を、卒業生、学生のみなさんと共につくりあげられることがとても嬉しいですね。ぜひたくさんの方から長岡造形大学に来ていただきたい。そしてこれからも、長岡造形大学を応援してもらえたらと思います。
濱辺さんも、企画の準備を引き続きよろしくお願いしますね。
濱辺 はい。学生たちとたくさんの企画を進めていますので、ぜひ様々な方にご来場いただきたいです。
それでは、インタビューは以上になります。今日はありがとうございました!
INFORMATION
創立30周年記念イベント
・【校友会主催】 校舎を彩る光の演出
11/1(金)、11/2(土)
17:00-20:00
・【学生企画】 デザイン大運動会
(ワークショップ、ライブ・コンサート、作品展示、他)
11/2(土)
※詳細は特設サイトをご覧ください。