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2022.02.10 教員

これからの時代、デザインが果たすべき役割~学長インタビュー~【前編】

2023年4月、長岡造形大学は新たな学科編成へと進化します。そのねらいは? 新しい体制で展開される学びとは? 気になる学科新編成について情報発信するシリーズ、第1回目は馬場学長へのインタビューです。

進むデザインのボーダーレス化

学科新編成の概要と、経緯を聞かせてください。

長岡造形大学は1994年4月に長岡市が公設民営の私立大学として開学しました。開学時は1学部2学科で、時代や学生の変化に応じて3学科、4学科と増えていきました。2023年4月の新編成では4学科から3学科になります。大学で学科数が減るのは珍しいケースもしれませんね。

背景には世の中の変化があります。ちょうど本学が公立化した2014年頃から「新しいデザインの枠」が社会で求められるようになってきました。具体的には、平面、立体、メディア、テクノロジーといったデザインの分野が、現代社会ではボーダーレスになってきたのです。単に「モノを作る」ことから「コトを起こすためのモノ作り」という考え方へ、デザインする目的や理由が多様なジャンルで求められるようになりました。

デザインカテゴリのボーダーレス化。それは「プロダクトデザインのことも知っているグラフィックデザイナーやWeb デザイナー」「メディアやデジタルについても詳しいプロダクトデザイナー」、そんなフレキシブルな人材を世の中が求めているということです。

タテ方向からヨコ方向の学びへ

学科の新編成によって、従来の視覚デザイン学科やプロダクトデザイン学科、建築・環境デザイン学科、美術・工芸学科はどうなりますか?

全学科が「デザイン」という大枠のもとにある、という考え方は今までもこれからも変わりません。建築も工学系とは少し違い、意匠建築というデザイン性の高い建築や、自然や環境と関わる外構・ランドスケープを含むデザインを複合的に学びます。美術・工芸に関しても、卒業して作家になる学生もいますが、工芸やアートの知見を生かしたデザイン職に就く学生も多いですね。

大学は垂直軸でカリキュラムを組むことが一般的です。年次ごとに専門に特化するカリキュラムですね。本学もそのように歩んできましたが、2023年にスタートする新編成では学科や領域を分ける垣根を限りなく低くし、より広く自由に学べる環境を整えます。

世の中を見るとデザイナーの活躍領域はどんどん拡大しています。行政、産業構造全体、地域活動など全てにデザインの考え方や手法が使われ始めているのです。デザインの出発点は「問題点」を発見すること。それに対してどのようなモノを作ることが必要なのか、人と人とのつながりや関係の構築が必要なのか、組織や社会の人の動きを分析し、どう見極めるのか。様々な要素を考慮し、新たなコトの提案まで含め、課題解決につなげる力がデザイナーに求められています。

企業が求める人材は

デザイナーへの期待が高まっているのですね。

そのとおりです。例えば、ソニー株式会社はテレビやデジタルカメラといったプロダクトの開発だけでなく、映画や音楽、ゲーム事業などを手掛け、変化・進化し続けています。富士フイルム株式会社は写真フィルムの生産を縮小し、フィルム製造で培った技術を生かした化粧品や医療機器などで新たな企業ブランドを確立しました。今、企業が求めているのは、すでに開発されたモノに関して学んできた学生ではなく「その先を見据えた発想のできる人材」なのです。

言われたモノを作れる人、図面を描ける人がいればいい、という時代から変わりました。デザインを提案するとき、プロダクトの基礎知識を持ちながらメディアのことも熟知しているなど、新しい視点と発想で議論できる能力を持つ人が求められています。

行政も同じです。地域住民の声を吸い上げるときに、デザインの手法を生かしていろいろな角度から課題を探り、解決へ導き、地域に還元していく。そんなデザインの活かし方も、これから大いに求められる分野だと思いますよ。

 

後編へ続く)

※設置計画は現在構想中であり、内容に変更が生じる場合があります。

PROFILE

学長
馬場 省吾