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とじる
2022.11.10 教員

感覚だけに頼らないデザインのスキルを磨くために

建築・環境デザイン学科 准教授 羽原 康成 先生
2022年に建築・環境デザイン学科の准教授に着任した羽原康成先生。ゼミの分野は「インテリア」ですが、先生は建築設計の実績も多く、最近では木を使ったものづくりにも携わるなど活動は多岐にわたります。また、羽原研究室ならではのちょっと変わった学び方もあるのだとか。ゼミ生も交えてお話をうかがいました。

自然素材を生かしたライフデザイン

先生の専門分野について教えてください。

名前はインテリア研究室ですが、インテリアをデザインするというよりは、それを含めた人間の生活や心理について研究しています。たとえば、部屋に緑があることで人の心理にどのように影響するか、といったことですね。京都で「美山木匠塾」という木を使ったものづくり活動をしているのですが、その教育効果や学生の心理についても研究し、博士論文にまとめました。

建築設計事務所に勤めていた頃は、集合住宅、ホテル、公共施設など様々な物件の設計を担当しました。建物の大小に関わらず、そこに詰まっているのは人間の生活です。それをどう組み立てるかという「人の生活のデザイン」を中心に考えています。

ビューロッジ琵琶 ロビー改修

ビューロッジ琵琶 ロビー改修:下足入れ

その一方でプロダクトデザインにも携わり、下駄の歯がいろんな動物の足型になっている「ashiato」や、花道の剣山に着想を得た木製の傘立て「KASANOKI」などを開発しました。

下駄「ashiato」

傘立て「KASANOKI」

「木」との関わりが深いですね。先生は自然素材のものづくりを大切に考えているのでしょうか?

必ずしもそうではないですが、木材や植物をベースに考えることが多いですね。というのも、人間の生活には必ず地球環境が関わるわけです。地球温暖化が進行する今、環境負荷の少ない建物やプロダクトを追求することで木材にたどり着いた、という要素は大きいと思います。

論文を読むことで世界が広がる!

先生の授業はどんな内容なんですか?

私は大阪芸術大学を卒業後、坂倉建築研究所に就職しました。そこで強く感じたのは、芸術系大学の出身者は「感覚」に頼るものづくりをすることが非常に多いということです。なんとなく美しいもの。なんとなく良さそうなデザイン。でもそれを言葉で説明できないんです。私自身、忸怩たる思いを抱えたことが何度もありました。
長岡造形大学も芸術系に近い大学です。私の経験を踏まえて、学生たちにはデザインだけでなく、それに関わる学術的な部分も知ってもらいたい。そのために論文を読んでもらうようにしています。論文に触れることが飛躍につながると思って力を入れていますが、学生には「堅いゼミ」と言われたりして賛否両論です(笑)。

たしかにちょっと難しそうですよね。研究室のお二人、どうですか?

他のゼミの学生は「論文?何それ?」みたいな反応ですね(笑)。私も羽原先生の研究室に入るまで一度も読んだことがありませんでした。でも本を読むのは好きなので、論文を通じていろんな知識や考え方に触れられるのは面白いです。(4年生・佐藤天衣さん)

もともと学科全体でもデザイン重視の傾向があって、それはそれで自由でいいのですが、私個人は根拠があって設計したい派。これまで感覚やひらめきに頼っていたのが、羽原先生の授業を受けて「学術的な根拠を加えてデザインが強くなる」というのを実感しています。(4年生・八巻凛香さん)

そもそも建築系の学科で論文を読むこと自体がめずらしいのでしょうか?

工学系の大学で論文を読むのは不思議なことではないと思いますが、芸術系の大学ではめずらしいのだと思います。私自身が大学時代に論文や学会に関わる機会がなく、それが世界を狭くしていると感じました。だからゼミ生にも「まずは興味のある分野から、好きな論文ピックアップしてみよう」と伝えたんです。
探し始めると、いろんな分野のいろんな研究があることが分かります。それに触れることで世界が広がりますし、自分の感覚が研ぎ澄まされる。芸術系出身の私が、学術的な要素をミックスした学びを提供できたら面白いんじゃないかなと思っています。
論文は敷居が高いと思われそうですが、今はゲームも論文になる時代。それを知るとぐっと身近に感じますよね。それにデザイン系大学だからこそ、学術系の人にはない視点で論文を読むこともできると思います。

幅広いデザインに興味があるなら建築・環境デザイン学科へ

とても興味深いお話です。これまでも他大学で非常勤講師をしていたそうですが、長岡造形大学の印象はどうですか?

一番の特徴は、建築・環境デザイン学科も含め、学生全体のグラフィックに対する能力が非常に高いこと。1年次の基礎造形演習の成果かなと思います。他学科の学生と一緒に作業して仲良くなって情報を仕入れたり、グラフィックやCADソフトを自由に使えたりと恵まれた環境だと思います。
あとは学祭で花火が上がるのには驚きました。長岡花火もすごいですが、長岡では花火が生活に根付いているのか、よく上がるんですよね。

八巻さんと佐藤さんは、長岡ライフはどうですか?

花火はたしかにちょくちょく上がります。長岡花火は家から見える人もいますよ!(佐藤さん)
私は海のない栃木県出身なので、新潟のおいしい海鮮をたくさん食べています。海や山にドライブに行ったり、日本酒の飲み比べも楽しんでます。(八巻さん)

最後に、先生から高校生にメッセージをお願いします。

建築のいいところは、建築士の資格が取れること。服飾やプロダクトなどいろいろなデザインの専門分野がありますが、建築は生活に関わるいろいろなデザインに触れられる。幅広いデザインに興味がある人は、ぜひ選択肢の一つとして建築・環境デザイン学科を考えてみてほしいと思います。

PROFILE

建築・環境デザイン学科 准教授
羽原 康成(はばら やすなり)