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とじる
2023.03.14 教員

デザインの幅を広げる「建築構造」の面白さとは?

2022年に建築・環境デザイン学科の准教授に着任した与那嶺仁志先生。専門分野は「建築構造」。
少し難しそうな響きですが、実はデザインとも深い関わりがあります。先生が「感動した」という建築構造の魅力や、研究室のユニークな活動について聞きました。

サグラダ・ファミリアに魅せられて

先生の専門分野や授業について聞かせてください。

建築業界は専門家の集まりです。意匠デザインをはじめ、設備やランドスケープなど様々な分野のプロがいます。私が専門とする「建築構造」は、建物の土台となる骨組みの部分を担います。建物の中にいる人を風や地震などから守る基本的な機能に加えて、普通の柱や梁を使った構造だけでなく、自由な発想でその建築に最も適した材料を使って空間と融合する構造(骨組み)をデザインしています。それを我々は「構造デザイン」と呼んでいます。

例えば、ガウディのサグラダ・ファミリア。装飾や見た目の特殊性に目を奪われがちですが、そもそもどうやって自立していると思いますか? ネックレスのチェーンの両端を持つと、だらんと安定した美しい形ができますよね。それをひっくり返して自立させたのがあの建築なんです。「逆さ吊り手法」というのですが、私はあの独特な形が構造的にも工夫されてできていることに感動してしまい、今この分野にいると言っても過言ではありません。他にシドニーのオペラハウスも面白くて、ヨットの帆のようなものが並んだ造形は、実は一つの球体から切り出して合理的に美しくできているんですよ。

デザイン大学で建築構造を学ぶ意味

とても興味深いです。先生が手がけた建築についてもご紹介ください。

一つは山梨県の富士山の裾野にある「ほうとう不動」という和食店。富士山にかかる雲をイメージした外観で、中はかまくらのように広く、まったく柱がありません。これはシェル構造という、貝殻のような曲面を用いたコンクリート構造でできています。

「ほうとう不動」 ©Nacasa & Partners Inc.

もう一つは栃木県にある「道の駅ましこ」。構造の原理自体はとてもシンプルですが、同じ大きさの木の梁を建物の広さに合わせて本数を変えることで、リズム感や独自性、周辺環境との一体感を生み出しています。この建物は2020年に日本建築学会賞を受賞し、私自身も2019年に日本構造デザイン賞をいただきました。

「道の駅ましこ」 ©道の駅ましこ

大学の授業はどのようなことをするのですか?

まず「建築構造」の授業は、建築構造が生まれるプロセスや構造種別を、過去の事例を交えながら紹介します。「構造力学」は計算の授業。嫌がる学生も多いですが(笑)。建築の設計をする上では、力の流れや伝わり方を理解する必要があります。この授業はバリバリ計算するというよりも、力がどう流れて建物が安定するのか理解してもらうことが主な目的です。

デザインには様々なアプローチがあって、突き詰めるほどに葛藤が生まれてくると思います。「こうしたいんだけど現実的には難しい」というような。建築の空間を具体化したりコントロールするためには、構造デザインの考えを抜きにはできません。構造の授業を通じて、物事をプロセス立てて考えるトレーニングをする。それがデザインの幅を広げることに一役買うと思います。

研究室では名建築をめぐる合宿も

研究室の学生にも聞いてみましょう。与那嶺先生の授業や、長岡での学校生活はどうですか?

与那嶺先生の授業は、実際に手を動かす小課題が多い印象です。先生の話を一方的に聞くだけではないので楽しいですね。
長岡は、雨や雪が多くて最初は苦手でした。でも自然豊かで気持ちいいですし、雨が降るからこそ晴れた日の青空が特別に感じられます。(3年生・市村ともかさん)



授業では、世界の有名な建築物が構造とこれほど密接に関係していたんだ、というのが新鮮な発見です。
私は工学系の大学と迷って長岡造形大学に来ました。他のプロダクトデザインや視覚デザイン学科の学生から美的センスというか、刺激をもらえるのがこの大学の良さだと思います。(3年生・杉谷望来さん)



与那嶺先生の授業は、誰が受けても分かりやすい印象です。生活に身近なものから構造につながっている例を教えてくれたりして、スッと理解しやすいです。
私は雪の降らない地域出身なので、雪を楽しんでいます。自分の拠点ができた感じで、長岡に愛着がありますね。(3年生・佐野芽衣子さん)



先生から見て研究室はどんな雰囲気ですか?

研究室には彼女たちを入れて5人の学生がいます。天気がいいと「今日は外でゼミをやりましょう」と連れ出されることもありますよ。「お菓子持ってきましたから」って(笑)。そういった感性は素晴らしいと思いますし、長岡造形大学の自然豊かな環境ならではだと感じます。

研究室では年1〜2回、建築めぐりの合宿をしています。今年は2泊3日で長野県や群馬県を回りました。千住博美術館、富岡商工会議所、群馬音楽センター、白井屋ホテルなどを見学しました。本物のスケール感や材料の質感は、写真やネットの画像では分かりませんから、いい経験になると思います。

最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。

建築の分野は、高校生の皆さんが想像するよりも幅広く多様な世界です。建築家になりたい人もいれば、私のように構造デザインが面白いと思う人もいるでしょうし、例えば舞台が好きなら劇場建築を極めるという道もある。好きなことや得意なことと照らし合わせて、フィットするものが必ずあると思います。やる気や興味があれば、きっと面白いことが見つけられると思いますよ。

PROFILE

建築・環境デザイン学科 准教授
与那嶺 仁志