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とじる
遠藤良太郎教授と学生
2021.02.23 教員

「長岡芸術工事中」長岡から、より豊かな社会を目指して

造形学部 美術・工芸学科 遠藤 良太郎教授(写真真ん中)
~長岡芸術工事中実行員会の学生と~

長岡造形大学と地元住民が協力し、2015年から開催されている“長岡芸術工事中”(旧称:ヤングアート長岡)。今回は、長岡芸術工事中(以下、「芸術工事中」という)の企画者のひとりである遠藤 良太郎先生にお話を伺いました。「アートをもっと身近にする」ことをテーマにした活動と、そこに秘められた想いをお伝えします。

“芸術工事中”とは?

そもそも“芸術工事中”とは、どのような活動なのでしょうか?

芸術工事中は、長岡造形大学の学生やゲストアーティストによる芸術祭イベント。長岡悠久ライオンズクラブの要望を受け、2015年からはじまりました。

長岡芸術工事中の概要説明をする学生

“長岡の街”そのものを展示場に、様々なデザインワークや絵画、立体作品の展示から、建物を大きく使ったインスタレーション、学生によるパフォーマンスまで、多様な活動を続けてきました。

作品の説明をする学生

試行錯誤を重ね、その姿を変えてきた

今までの形式にとらわれないで、アートを伝えていっているのですね。最初から、今のような活動方針だったのでしょうか?

2015年からはじまった芸術工事中は、開催のたびに得られるフィードバックを基に、その形を変えてきました。

今でこそ、様々に表現の幅を広げている芸術工事中。開催当初は、銀行や飲食店の一画に作品を置かせてもらう、“街中展示”のスタイルでした。

活動方針を話す遠藤教授

しかし、それでは限られた人にしか作品を観てもらえない。それぞれの作品も、その本来の姿を見てもらえない…

例えば、居酒屋に展示された作品は、“大人”にしか観てもらえません。お店と作品の雰囲気が合わないこともあるし、作品に気付いてもらっても、せいぜい「あの絵、なんか良いな」で終わってしまうでしょう。

そうではなくて、もっとリアルに、アートを感じてもらいたい。そのための時間を取り、アートの世界に“没入”する体験をしてもらいたい。人々の反応を見て、そこから「もっとこうしたい」と考えを研ぎ澄ませ、芸術工事中は姿を変えてきました。

インスタレーションのはじまり

活動を通して、形式を変えてきたのですね。今のような活動形式になったのは、いつ頃からですか?

2017年に「ヤングアート長岡」から芸術工事中は“長岡”の名を冠し、「ヤングアート長岡 芸術工事中」へと名前を変えました。(2019年より、「長岡芸術工事中」へ名称変更)今までとの大きな違いは、“長岡”という街にフォーカスしつつ、作品を展示していくことです。

例えば、ビルの1フロアを丸ごと使ったインスタレーション。絵画を飾るだけでなく、その前に一脚の椅子を置き、花火や空襲の”音“が静かに流れる空間では、長岡の土地と歴史を感じられます。

廃ビルでのインスタレーション作品

テナントのショーウインドウに学生たちが入り込み、空間を大きく使い、リアルタイムで作品を作っていくパフォーマンスもしました。学生たちは自ら作った作品の中で踊ったり、お昼ご飯を食べたり、アーティストとしての制作の過程も、すべてを披露しました。

ショーウインドウに入り込む学生

2020年は初のオンライン開催

昨年は、初のオンライン開催をしたと伺いました。やはり、地域からの協力はあったのでしょうか?

新しい生活様式の普及もあり、2020年には初のオンライン開催へと踏み切った芸術工事中。地元テレビ局の協力を得た学生たちは、カメラを携え、アートの展示された長岡の街を巡りました。

オンライン配信の撮影風景

映像は、長岡の街から造形大学のメインブースを経て、YouTubeで日本全国へと生中継されます。地域社会の中でサポートを受け、「地方都市で、こんな面白いことをしているんだ」という事実を届け、多くの人の心を打ちました。

造形大学メインブースの様子

「もっと豊かな日本社会」を作るために

最後に、何のために“芸術工事中”を続けてきたのか、これからの方針も併せてお聞かせください

試行錯誤を重ね、より多くの人々にアートを届けようとするのは何故なのか。それは、アーティストやデザイナーが活動していることで、人々の生活が豊かに潤う社会をつくることで、地域社会に寄与するためです。

これからと未来を話す遠藤教授

学生の多くは、卒業後、デザイナーとしての就職を目指しています。アーティストやデザイナーは、最終的にフリーを目指す人も多いでしょう。しかし、その前に就職し、実績と人脈を築く過程が必要です。そのため、東京での就職を考えている学生も多くいます。

リアルな問題として、地方でアートやデザインの仕事を得るのは難しく、周囲の理解を得づらいと感じています。

「だけど、地方でしか育めない、“その土地ならではの感性”もあります」

東京で育つのは、東京ならではの感性。東京も地方も同じように育つということは、アーティストやデザイナーの感性が、画一化されてしまうということでもある。芸術工事中は、そんな現状を変えたいという想いを軸に、姿を変えてきました。

人々がもっと気軽にアートの触れることで、アートやデザインがもっと身近になる。それらのフィードバックがアーティストやデザイナーを刺激する。アートに触れることで、人々の心もより豊かになる。

長岡から、「もっと豊かな日本社会」を作るために、アーティストやデザイナーたちはこれからも発信を続けていきます。

PROFILE

造形学部 美術・工芸学科 教授
遠藤 良太郎(えんどう りょうたろう)


学生作成のWebアーカイブをご覧ください!

学生実行委員のメンバーが企画からデザイン制作まで行った長岡芸術工事中のWebアーカイブです。
過去7回の内容が開催年ごとに紹介されています。以下よりぜひご覧ください。
https://www.nagaoka-id.ac.jp/geijutsukojichu/