デザインの楽しさとは?これからのデザインは? NADCアワード2022グランプリ&準グランプリの二人によるスペシャル対談【前編】
長岡造形大生も関わる「NADC」とは?
NADCアワード2022受賞おめでとうございます。そもそもNADCとはどんな活動・団体なのでしょうか?
吉川 新潟のデザイナーやアートディレクターによる課外活動の一環で、2007年にスタートしました。もともと東京にADCがあり、その後各地で設立され、新潟でも大先輩たちが新潟のデザイン活性化のためにやろうと。私も五十嵐くんも設立当初から参加して、もう15年です。
五十嵐 そうですね。
吉川 毎年開催する審査会では著名なデザイナーを審査員にお招きしています。これが今までの年鑑です。私はありがたいことに比較的コンスタントに賞をもらっていたのですが、賞を意識しすぎたせいか2015年はまったく取れず…「もういいや」と開き直ったらまた取れ始めて、2017年にグランプリをいただきました。五十嵐くんはそういう節目はあった?
五十嵐 2011年ですね。それまでデザイナーとしてAD(アートディレクター)の下で仕事をしていましたが、自分がADとして携わった案件で審査員特別賞をいただけたのはうれしかったです。
吉川 みんなそれぞれドラマがあるよね。年鑑を見ながら飲んで語り合えるほど。最初の頃はお互いあまり知らないこともあってなんか緊張感があったけど、今では新潟のデザインを高めてきた同志という感じです。他の地方ではあまり若手が育たないという話も聞きますが、新潟は新しい人も賞を取り始めて、循環している印象です。
長岡造形大学の学生も出品できるのですか?
吉川 残念ながら出品はプロ限定なのです。審査会のボランティアスタッフとして学生を連れて行ったり、学校で年鑑を販売したりしています。卒業生が新潟市に就職してNADCに参加する、という流れも少しずつできています。
有言実行しグランプリを受賞!
五十嵐さんはNADCのグランプリをずっと目標にしてきたとお聞きしました。
五十嵐 2017年に、準グランプリの次に評価の高い新潟ADC賞をいただきました。もちろんうれしかったのですが、次の目標として「グランプリを獲る」と紙に書いて自分のデスクの壁に貼ったんです。その紙がうっすらクリーム色になり始めた頃に今回のグランプリをいただけて。今は新しい目標を書いた紙に貼り替えて、そこには「海外のアワードを獲る」と書きました。
吉川 素晴らしい。今度は紙が白いうちに取りたいね。
五十嵐 はい。海外も意識するんですけど、吉川先生はNADCで毎年何かしらの賞を取っています。自分も毎年賞に絡んでいけるようになりたいです。
吉川 ちなみに学生時代の研究室はどこだった?
五十嵐 タイポグラフィの研究室でした。成績は中ぐらい。普通の学生でした。ただ就職活動でポートフォリオを作る時、どうしてもアートっぽい作品が多いので、面接する側が判断に困るのではないかと。何か実践的な事例が欲しいと思い、知り合いの洋服屋さんに個人的にお願いしてDMやスタンプカードを作らせてもらいました。
今は学生を面接する立場です。学生のポートフォリオを見ていると、イラストなど単体の作品が多い印象。それも素晴らしいのですが、それらを活かしてどうするかという文字組みやレイアウトを見たいなと思うことはあります。
「視覚デザイン」の本質を追求した卒業研究
学生時代で印象に残っているエピソードはありますか?
五十嵐 やはり卒業研究でしょうか。作ったのは、視覚障がいのある人も楽しめるトランプ。ハートならハートの形に抜いて、数字は点字キットで打ちました。当事者の方にも試してもらって改良を重ねて。箱やポスターも一式作りました。
なぜ視覚障がいのある人に向けたものを考えたんですか?
五十嵐 視覚デザイン学科は視覚伝達物を作る学科。それを見ることができない人に、どうしたら楽しさが伝わるだろうと色々考えてトランプに行き着きました。
自信があったので優秀賞を取れるだろうと思っていました。でももらえなくて、ショックすぎて意識を失ったんですよ(笑)。
吉川 えっ!?
五十嵐 発表会の後に家族と一緒に食事をしている時に気を失って…。気づいたら病院でした。
吉川 張り詰めていた緊張が一気に…。親御さん心配したでしょう。それだけ気合が入ってたんだ。
五十嵐 そうですね。学生時代の思い出は色々ありますが、一番はやっぱりそれかな(笑)。
五十嵐さん・吉川先生の受賞についてくわしくは【こちら】
PROFILE
視覚デザイン学科 准教授
吉川賢一郎
卒業生/
株式会社アドハウス・パブリック アートディレクター
五十嵐祐太