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とじる

視覚デザイン学科3年生 坂部奈々美さん撮影

視覚デザイン学科3年生 坂部奈々美さん撮影

2021.07.05 教員

モノだけでなく体験もデザインする

造形学部 プロダクトデザイン学科 金山 正貴准教授

金山正貴先生がデザインするのは、モノ+コト。つまり、プロダクトデザインだけでなく、モノを体験することで生まれる「楽しさ」や「感動」をデザインするインタラクションデザインも手掛けてきました。その実績は、PCやスマホ、コミュニケーションロボットなど多岐にわたります。

造形大でもその実績を活かし、ITなどのテクノロジーを使ったデザインを中心に指導しています。そして今、金山研究室では、「遊び」をテーマに楽しい体験をデザインするという課題や、卒業制作に3、4年生が挑戦中です。UXのデザインに取り組む先生と学生にお話を伺います。

生き物らしい動きをするロボット

先生はこれまでどんなデザインをされましたか?

デザイナーとしてのスタートは、船舶メーカーでのボートのデザインです。その後、IT企業の富士通でノートパソコンやスマホなどの電子機器、ロボットなど、製品の外観のデザインを中心にアプリやサービスのデザインにも取り組みました。2016年にデザインに関わらせてもらった案内ロボット「ロボピン」は、地図アプリに表示されるピンをモチーフにしたわかりやすいフォルムと、体を傾けながら手振りで方向を示す動きが特徴です。

その時の経験から、生き物らしい振る舞いをするロボットに興味を持ち、その後、倒れそうになると腕を振ってバランスを取る、振り子のようなロボット「OTTOTTO」を制作しました。子供のころからアニメーションに興味があり、宙で足を回転させたり、手をばたつかせたりするような動きを現実にしてみたいという発想が根底にあるからかな、と思っています。

案内ロボット「ロボピン」

案内ロボット「ロボピン」

振り子のようなロボット「OTTOTTO」

振り子のようなロボット「OTTOTTO」

楽しいを切り口にデザインの可能性を創造する

授業ではどんな指導をされるのですか?

たとえば、過去に学生達と取り組んだ「規格外えんぴつ」(写真:最下段)があるのですが、普段使っている鉛筆を巨大化しスケールを変えるだけで、モノを書く体験がたちまち楽しいものに変わる。また、ロボットが安定して正確な動きをするのではなく、あえて不安定な動作をさせることで、そのギャップに驚く。こういった楽しさや驚きがUX(ユーザーエクスペリエンス)。一般的にデザインと言うと、製品の外見の色、形を考えることと思われがちですが、身の回りにある物の大きさや構造などのあらゆる既成概念を捨てて、新しい可能性を拓いてほしいと思います。今までなかったものを創造するのがデザインなので。

また、それらとともに製品をデザインする際にはユーザーの目線に合わせることも大事で、常に「誰かのためになる」というメッセージを「わかりやすく伝える」ことが必須です。ですから、デザインに取り掛かる前にリサーチは欠かせません。私自身、シニア向けスマホ「らくらくスマートフォン」のデザインに関わった時は、高齢者に人気の巣鴨や、高齢者対象のスマホ教室に行って動向を観察して好みや困りごとなどを探り、デザインに反映させました。

シニア向けスマホ「らくらくスマートフォン」

シニア向けスマホ「らくらくスマートフォン F-12D」

自身の軸で体験価値をデザイン~学生の声

今取り組んでいる作品について教えてください。

私は音楽が好きで作曲もします。そこで子どもが音楽に親しみ、楽しめるように、音楽とアスレチックを組み合わせたイメージの楽器。たとえば、触ると音が出る積み木のように、全身を使って、遊びの中で音楽を楽しめるものを目指しています。(平山圭吾さん 4年)

私のテーマは自然と物の関係。電子機器がいっぱいの今だから、自然を感じ、触れ合える体験を提案します。長岡は雨が多いのですが、雨をポジティブに感じられるように、雨が降ると音が鳴る楽器を作って雨の日に人を戸外へ誘う仕組みをデザインするなど、モノとサービスの両面から考えています。(星野伽奈さん 4年)

造形大の魅力は、デザインや絵画、木工など幅広く美術について学べるところ、そして、先生と学生の距離感が近く、質問や相談がしやすいところです。私は3年前期のパッケージ演習でギフトを包むデザインの面白さにはまり、卒業制作はパッケージデザインと体験展示を組み合わせたものにしようと決めました。(五十嵐千恵さん 4年)

モノづくりの仕事がしたいと思い入学しました。手を動かす作業が好きなのでプロダクトデザイン学科へ。今は、AdobeのIllustratorやPremiereなどのデジタルツールを用いた映像作品を制作中です。声を出して笑えるエンターテインメントを目指し、内容も展示や発信の方法も合わせて工夫しています。(工藤之安さん 3年)

左から星野さん、五十嵐さん、工藤さん、平山さん

好きな気持ちが可能性を拓く

UXデザインをめざす人へメッセージをいただけますか。

UXデザインでは、サービス的な視点でデザインを捉えたり、テクノロジーを使って、楽しい体験をデザインしたりすることが目標ですが、そういった難しそうなことに苦手意識を持つ学生もいます。ゼミではデジタルツールやプログラミングなどの基礎的なレクチャーを行っていますが、デジタルを使うことが目的ではありません。むしろ、それをうまく活用して従来のプロダクトデザインに新しい価値を付加した作品も多くなってきたと感じています。だから、難しく考えすぎないでください。大事なのは気持ち、好きで好きでたまらないことがあれば、何とかなるものです。

今までなかったことを創造し、それが誰かの役に立つ、それがデザインです。そこでは、無限にアイデアが広がり、夢がある楽しい世界ですよ。

写真は視覚デザイン学科3年生 坂部奈々美さん撮影

PROFILE

造形学部 プロダクトデザイン学科 准教授
金山 正貴(かなやま まさき)